僕に青春を教えてくれた恋人  (僕にアオハルを教えてくれたヒト)

 僕はまた、通院日を迎えた。体調の変化はない。心境の変化はあったけど。
「あのさ、先生」
「ん、どうした?」
「僕さ、やっぱりリハビリ受ける」
「え、ホントに!?」
「ホント。この僕が嘘言うわけないじゃん」
悪戯に笑った僕を見て、風雅先生も一緒に笑う。
「そっか。わかった。一緒に頑張ろうな」
「うん……、って、理由、聞かないんだ」
「聞いたって、答えてくれないだろ? ははは」
「ある人と、約束したから。それだけだけど」
「ある人?」
「そこは、察しろ。口が裂けても言わないからな!」
「裂けたら何も言えないと思うけど、フフッ、わかった。じゃあ、早速だけど、予定立てようか」
「うん」
 病院からの帰り道、ポケットに入れていた携帯が振動した。画面には、姉からのメッセージが表示された。
「またかよ」
 メッセージアプリには、変な動きをする犬が平謝りするスタンプとともに、買い物リストが送られてきている。特売日だから、野菜だけでなく、肉や魚、調味料と、一週間分の買いだめをするらしい。重すぎて、両手が引きちぎれるかもしれない。そう思いながら、スーパーの自動ドアをくぐった。
 両手にレジ袋をぶら下げ、家までの道を歩く。まだまだ暑く、額や背中から汗が流れ落ちていく。
「早く帰りたい」なんて愚痴をこぼしていたら、後ろから「おーい」と叫ぶ声が聞こえた。振り返ると、自転車のペダルを懸命に漕ぐ、姉の姿があった。
「え、お姉ちゃん!?」
「そこで、ストップ、して!」
「あ、うん」
 立ち止まる。姉は息を切らしながら坂を上ってきて、僕の横で足を付いた。
「お姉ちゃん、今日早くない?」
「自転車、かっ飛ばしてきたからね」
「あー、え、でも用事があるって、今朝言ってなかった?」
「なくなったんだ。約束の人が体調不良で出社しなかったから。それで、かっ飛ばして帰ってきた」
「ふーん」
「どうせ、皇叶のそんな細い腕じゃ、途中でリタイアすると思ってね」
「じゃあ、最初から迎えに行くって言えよ」
「別にいいじゃない。合流できたんだし」
「まぁ、そうだけど」
「それで、病院はどうだったの?」
「変わらない。リハビリの頻度もね」