期末試験を終え、返却が行われた数日後には、夏休みに突入した。といっても、特にやることもないために、毎日少しずつ課題をやり進めていた。姉が仕事にいって不在のときも、家で一人、留守番がてら課題をしていた。
 もちろん、母は帰ってこない。最近はいつ家に帰ってきたのか、僕も姉も知らないでいる。もう、こうなると本当に二人暮らしでしかない。母用に一応残す夜ご飯は、翌日、僕と姉の朝食になる。特に物欲が無いし、電気代やら水道代といった費用がかからないよう、極力節約を意識しているから、多分お金は溜まっていると思う。
 八月十三日、櫻楽と遊びに行く日は、姉が給料の中から一万円もくれた。
「これ、お小遣い。その代わり、オーバーした分は毎月の小遣いから払ってよ」
「ありがと。贅沢しないようにする」
「帰る時間わかったら、早めに連絡してよね。夕ご飯作っておくから」
「わかった。行って来ます」
「行ってらっしゃい」
 待ち合わせ場所は、スーパーの駐車場。風雅先生が自家用車を出してくれる約束になっていて、気温と僕の病気の現状を鑑みてのことだった。
 約束の時間より十分も早く到着したにもかかわらず、二人は既に到着していて、僕を見つけるなり手を振って、「こっち、皇叶」と窓から身を乗り出して伝える櫻楽がいた。
「やっほ」
「風雅先生、ありがと」
「ううん。大丈夫?」
「うん。問題ない」
「そっか。後部座席に乗って、シートベルト締めて」
 助手席後ろのドアを開ける。すると、櫻楽が手を挙げ、「おはよ、皇叶」と言った。
「おはよ」
「今日、私服一丸と気合入ってるな。カッコイイ」
「うるさい。いつも制服だから見慣れてないだけだろ」
「いやいや、そんなことないって。な、兄ちゃん」
「いや、俺は診察の度に見てるから、フツーだけど」
「えー、ずりぃ」
「ずるくないだろ、な、皇叶君」
「うん」
「え~、二人とも俺の敵なのかよ。あーあ」
「ハハハッ、ホント、櫻楽はわかりやすい性格してんな」
「え、そう?」
「時間無駄。早く行こう」
「あ、ごめんごめん。よし、じゃあ、行くか」
 風雅先生はアクセルを踏んだ。ゆっくりと、車は発進した。