山盛りだったどんぶりの中身は、あっという間になくなった。
「お母さんの分、これだけあったら足りるかな」小皿に取り分けられた野菜炒めにラップをかける。
「足りるんじゃね? どうせ食ってかないだろうし」
「だよね。そうなったら、私たちの明日の朝ごはんになるだけね」
「先、風呂入ってくる。出たら課題やるから」
「了解」
足を延ばして入ることのできない浴槽には、周に二日しか湯を張らない。今日は張らない日だ。
姉は今年に入って、髪の毛を三十センチほど大胆に切った。水道代だけでなく、光熱費も節約する目的だった。幼少期から見てきた姉は、いつも艶のある黒髪を風に靡かせていた。しかも、甘い香りも漂っていた。それなのに、今は真逆で、髪の毛に艶もなくなったし、全体的にパサついたボブヘアになっている。髪が靡いても安っぽい石鹸の香りしかしない。
僕だって、前よりも髪を短く切るようにしている。タオルで乾かせるぐらいに。
「お姉ちゃん、服取って」
「え、また用意せずに行ったの? どれ?」
「どれでもいいから、早く!」
「まったく、どうしていつも忘れるのよ」
「うるさいなー、早くしてよ」
「はいはい」
選択カゴ一杯の洋服。その中に、俺の体操服も紛れ込んでいる。
「はい、持ってきた」
「サンキュ。って、え、これかよ」
「どれでもいいって言ったの、皇叶じゃん。せっかく持って来てあげたのに、お姉ちゃんに文句でもあるの?」
姉は全く怖くない。いくら目を吊り上げても、口調を悪くしても、いつも見てる穏やかな姉と何ら変わらない。僕は頬に力を入れて、「文句ないし。別に」と言った。姉はふふっと頬を緩ませた。
「お母さんの分、これだけあったら足りるかな」小皿に取り分けられた野菜炒めにラップをかける。
「足りるんじゃね? どうせ食ってかないだろうし」
「だよね。そうなったら、私たちの明日の朝ごはんになるだけね」
「先、風呂入ってくる。出たら課題やるから」
「了解」
足を延ばして入ることのできない浴槽には、周に二日しか湯を張らない。今日は張らない日だ。
姉は今年に入って、髪の毛を三十センチほど大胆に切った。水道代だけでなく、光熱費も節約する目的だった。幼少期から見てきた姉は、いつも艶のある黒髪を風に靡かせていた。しかも、甘い香りも漂っていた。それなのに、今は真逆で、髪の毛に艶もなくなったし、全体的にパサついたボブヘアになっている。髪が靡いても安っぽい石鹸の香りしかしない。
僕だって、前よりも髪を短く切るようにしている。タオルで乾かせるぐらいに。
「お姉ちゃん、服取って」
「え、また用意せずに行ったの? どれ?」
「どれでもいいから、早く!」
「まったく、どうしていつも忘れるのよ」
「うるさいなー、早くしてよ」
「はいはい」
選択カゴ一杯の洋服。その中に、俺の体操服も紛れ込んでいる。
「はい、持ってきた」
「サンキュ。って、え、これかよ」
「どれでもいいって言ったの、皇叶じゃん。せっかく持って来てあげたのに、お姉ちゃんに文句でもあるの?」
姉は全く怖くない。いくら目を吊り上げても、口調を悪くしても、いつも見てる穏やかな姉と何ら変わらない。僕は頬に力を入れて、「文句ないし。別に」と言った。姉はふふっと頬を緩ませた。



