誰もが寝静まった真っ暗な夜。

この街の中でも1番と言っていいほどタワーマンションの最上階で、暗い顔をしてベランダに佇んでいる女の子がいた。

中学1年生の未來(みく)。

クラスの子達からいじめられていて、学校では孤立していた。

それに加えて、家族の仲は悪く毎日夫婦喧嘩。

誰にも相談することすらできずに1人で抱え込んでいた。

そして、彼女はとうとう耐えきれなくなってベランダから飛び降りようと考えていた。

辛い毎日から解放されたい。

死んで楽になりたい。

そう願って身を乗り出そうとした。

「……っ」

しかし、タワマンの最上階とあってあまりの高さに怖気付いた。

道路を走行している車がまるで豆粒のように小さく感じるほど、結構な高さで足が竦む。

ここから飛び降りたらきっと命は持たないだろう。

たとえ、助かったとしても激しい外傷を負うだろうし、なんかしらの後遺症が残るかもしれない。

そんなのはイヤだ。

さっきまで死にたいと願っていたのに、急に死ぬのが怖くなって涙がこぼれ落ちた。

寝ている家族にばれないように、口に手を当て声を押し殺して泣いている。