「ええ。それは確かに、そうですが……」

 私が一番に心配している事は、公衆の面前でダヴェンポート侯爵家の顔に泥を塗られてしまったと言うことだ。

「リディアが心配していることは、わかっている……しかし、ジャイルズ公爵は少し前にお話したところ、とても好意的だったし、もしこれを知っているのであれば、それなりの態度だっただろう。リディアを待っている間に使用人にも話を聞いたところ、ナターシャ様が独断でした事だ。領地戦といった、最悪の事態にはならないはずだ」

「そうなのですね。お父様……」

 私が心配した想像通りの事は起こり得ないと聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。

 良かったわ。領地戦になればどうしても戦闘員以外にも被害を出してしまうし、ジャイルズ公爵家は騎士団を数多く擁すると聞いていたから。

「ああ。リディア。あのようなことになって心配であっただろうが、お前が何かを悩む必要はない……しかし、お茶会でケーキを倒されてしまうとは……犯人の姿を見なかったのか?」