「……殿下。王族は特別に能力(ギフト)が十歳で発顕して『好きな相手の好感度が上がる時、周囲が輝いて見える』であることを、いつリディア様に知らせるつもりなんですか? 私はあまり良くないと思います。それに、これは人間関係の試験で不正をしていると同じことですよ」

 真面目なアンドレは説教くさいところがあり、僕は彼の年齢をたまに疑わしく思う時がある。

「……もうすぐ、彼女に伝えるつもりだよ。アンドレ」

 苦笑してそう言った僕の机の上に、次に決裁する書類を置いて、アンドレは目を眇めた。

「当分は、告白しないおつもりでしょう。いけませんよ。空返事は」

 以前、僕が婚約者リディアに対する態度はなっていないと怒られて、能力(ギフト)について白状させられたという経緯がある。

 アンドレも婚約者からの冷たい態度に喜ぶリディアについては『私には理解出来ない考えを持つお方もたくさんいらっしゃいますから』と、言葉を濁していたが、思いもしなかったに違いない。

「……仕方ないだろう。僕の能力(ギフト)がなければ、リディアが冷たく接されて喜ぶ女の子だとは、絶対に知れなかったはずだ」