「あ。そうです。夜会用のドレス……どうもありがとうございました」

 本日訪問時に渡された、明日の夜会用のドレスと装飾品のお礼を言った。レンブラント様から贈られるドレスは私好みのもののため、届けて貰える時がいつも楽しみなのだ。

「……ああ。婚約者として当然の事だ。気にしないでくれ」

 レンブラント様はすげなくそう言って、お茶を飲んでいた。これまでの関係性であれば、何も思わずに流せてしまえたはずだ。

 けれど、彼の事を好きだと気がついてしまっている私は、そんな冷たい態度を見て胸が痛くなった。

 本当に……勝手なものだ。ほんの少し前まで、彼のこういうところが良いと思っていたはずなのに。

 こんな風に冷たい態度を取られてしまうと、すごく切ない。

「……リディア? どうした。何かあったのか?」

「いっ……いいえ! なんでもありませんわ。レンブラント様も、気になさらないでください」

「……そうか」

 レンブラント様は私をしげしげと見ていて、なんだか不思議そうだ。

 ……どうしたのかしら。幼い頃から婚約者として長く一緒に居たけれど、レンブラント様のこんな表情は初めて見る。