今日は前々から予定していた、婚約者レンブラント様との週に一度のお茶会の日だ。

 先週はダヴェンポート侯爵邸だったので、今回は城中にある庭園で行われることになった。

「……リディア。何か心配事でも?」

 レンブラント様はいつもよりも言葉少なめな私を見て、何かあったのかと聞いてくれた。

 私たち二人はお互いにお喋りな方ではなく無言が続くこともあるのだけど、それが嫌だと思ったことはなかった。

 こういう落ち着ける空気感が、私は好きなのだと思う。

「いえ。そういう事でも、ないのですが」

 今の私は歯切れ悪く、こう言うしかない。

 レンブラント様にこのところあった私の近況を話そうにも、最終的な結果である神殿からの返信がまだ届いていないのだ。

 だから、中途半端な話をしてしまうことになるし、もし彼に何かを説明するにしても、それが判明してからにしようと思っていた。

 昨夜、お兄様と話してから『もしかしたら、私の能力(ギフト)は恋愛指数を数値化して見る事ではないのかもしれない』と気が付き、それが確かだったならば、今のレンブラント様の頭上に浮かぶ数値は何を表すのだろう。

 今だって、最高値である『100』という可愛らしい数字が、ふよふよと浮いている。

「……そうか。何かあれば、すぐに教えて欲しいのだが」

 レンブラント様は私の婚約者としての義務を果たそうとしてか、素っ気なくもそう言った。

 常に冷たい態度を取る癖に、こういうところは、やたらと優しい人。

「申し訳ありません。これは個人的な事情が含まれますので、レンブラント様にお話出来る時が来れば、すぐにお伝えするように致します」

「……わかった」

 今は何も言えないと私が申し訳なく思い頭を下げれば、レンブラント様は黙ったままで頷いた。