「なんだ。なんだ。物憂げな顔して……何かあったのか?」

 父によく似ていて髪も目も同じ色を持つジョセフお兄様の頭上を見ると、なんと最高値『100』の数値がふよふよと浮いていた。

 これまで婚約者レンブラント様に別の女性が居るのではないかとその事で頭がいっぱいになっていたし、我が家のお父様とお兄様は最近忙しかった。

 だから、兄の顔をこうして、まじまじと見ることはなかったけれど……もしかしたら、私の知らない間に恋人でも出来たのかもしれない。

「まあ……お兄様。私の知らない間に、恋人でも出来たの?」

 驚いた私はついつい頭に浮かんだ疑問をそのまま口にして、これまでの何の前情報のないジョセフお兄様は不思議そうな表情を浮かべていた。

 いけない。私の能力(ギフト)を知らないのならば、それは何の意味もないわ。

「え? ……何を言い出したんだ。リディア。お前だって知っての通り、多忙過ぎて夜会にも行けないというのに、恋人など出来るはずがないだろう?」

「そ……そうよね」