「しかし、何をどう説明して良いものか……ダヴェンポート侯爵令嬢、僕はイーディスを本当に愛していますし、彼女を騙そうなどと考えたことなど、これまでに一度もありません」

 私はその時に、眉を寄せた彼の頭上にある数字が『20』から『16』へと、数値が低く変化したことに気がついた。

 ……あら。もしかして、私にこうして問い詰められて、イーディスとの恋愛関係続行が難しいと思ったのかしら。

「とにかく、私の言いたいことはこれよ。エミール。イーディスに邪な思いで近づくのであれば、私が絶対に許さないわ。これを知って彼女が傷つかないうちに、貴方の方から去って欲しいの」

 両者共に引くつもりがないと表すように、私たち二人はじっと見つめ合った。

 そんな中でも、エミールの恋愛指数はゆっくりと低下し、今ではもう一桁の『5』になってしまっていた。

 騙そうとしていた事が露見して、彼だって居心地が悪いかもしれない。けれど、それをこうしてエミールに指摘しなければならない私だって辛いもの。

「……非常に申し上げにくいのですが、ダヴェンポート侯爵令嬢。それは僕にとっては全く身に覚えのない事で、悪質な言い掛かりに近いものです。貴女がイーディスの親友だとしても、許し難い」

 取り繕うことをやめてわかりやすく怒りの表情を浮かべたエミールは、私の言葉を受け入れ難いと思っているのか、両肩を震わせていた。

 もし、演技だったとするならば、彼は非常に上手い詐欺師だと思うわ。

 私はエミールの姿を見て、冷静にそう思った。

「私だって……何も貴方を侮辱したくて、こうして話している訳ではないわ。現に貴女の恋愛指数は下がり続けていて、今では一桁なのよ」

 双方の恋愛指数が釣り合わないという事実に、エミールの事を考えているイーディスの幸せそうな表情が重なる。

 彼女のあんなにも純粋な信頼を裏切ろうと言うのならば、私だって強硬手段に出るしかない。