そうは言っても、これは簡単な話でもない。王族と婚約していながら、婚約解消をするなんて普通ならばあり得ないことだ。

 ……先方からの申し入れならば、別かもしれないけれど。

「イーディス! ここに居たのか……こんにちは。リディア嬢。お久しぶりです」

 これはイーディスの恋人、エミールの声だ。

 イーディスは嬉しそうに恋人へと手を振って、私は何気なく久しぶりに会う彼の方向へと顔を向けた。

 その時に、エミールの頭上にあり得ない数字を見て、飲んでいたお茶をむせてしまった。

「ごほっごほっ……」

「リディア。大丈夫?」

「驚かせて申し訳ない! ……近付いてから、声をお掛けしたら良かったな……」

 私は見間違いかもしれないと思って、こちらへと寄ってきたエミールの頭の上にある数字を再度確認した。

 嘘でしょう……彼は熱烈に口説き落としたイーディスと付き合い始めたばかりだというのに、何故恋愛指数が『20』なの?

 私は心配そうに自分の背中を撫でてくれているイーディスの頭上にある数字を確認した。