「……なんだか、お仕事の邪魔をしてしまっていて、申し訳ありません」

 そんなつもりはなかったけれど、彼がここに居て私がここに居ると知っている経緯を知れば、それは納得する事が出来た。

 つまり、会見用に貸し切っていたレストランの中で、部外者と言える人は私だけだったのだわ。

 アンドレったら……これも、教えてくれれば良かったのに。

 いいえ。こっそりレンブラント様の予定を教えてくれただけ有り難いし、アンドレには感謝しなければならないけれど。

「いや。構わない。だが、君は誰か友人と共に食事に来るのかと僕は思っていたんだが、ずっと一人だった事が気になっていた。食事もあまり進んでいないと聞いたが」

 食べた量まで筒抜けになってしまっているけれど、レンブラント様の婚約者だから、特別な貸切でも予約が取れたという事情ならば仕方ないかしら。

「……そうです。評判のレストランだったので、以前から気になっていたのですわ」

 実は私もイーディスに頼んで一緒に来てもらおうとしていたのだけど、残念ながら彼女は恋人エミールとデートの予定が入っていたのだ。

 これは誰にでも話せるような内容でもないし、私と一番近しい存在である彼女が無理ならばそれは仕方ない。

「そうか……」

 私の事情を聞いて不思議そうな顔をして頷いたレンブラント様は、臣下に呼ばれて次の予定に行くと別れを告げ慌ただしく去っていった。

 ええ。とても多忙なのよね。わかっているわ。

 だって……私はこの後の予定も知っていて、後を尾けるのだもの。