「……ええ。失礼します」

 私が馬車の座席に腰掛けて車窓を見れば、レンブラント様は整った顔に珍しく変な表情を浮かべていた。

 これまでの私は感謝の言葉を述べて、良く出来た婚約者らしく微笑み去って行くところだったからだ。

 私は自分に冷たい態度をするレンブラント様のことが、好きだと思っていた。彼はベタベタせずに暑苦しくなくて、自分にはちょうど良いと。

 ……けれど、本当はそうではなかった。

 レンブラント様が女性を苦手だったり好きではなかったり、また私自身をあまり良く思ってなかったとしても、それはそれで良かったかもしれない。

 そう。あの頭の上の数字が『0』か『10』辺りだったとしたなら、私も彼の態度にも納得し満足していたはずだ。

 だって、私は男性からあまりベタベタされたり、甘やかされたりすることが好きではない。

 そうされることを全く望んでいなかった。

 そういった意味で彼は今まで理想的な婚約者であったし、私が好きになれる男性だった。