けれど、それは彼の頭の上に浮かぶ恋愛指数が違っていると証明してくれていた。

 私は単に決められた婚約者で、彼には他に違う女性が居る。

 それはもう、事実なのだ。私は黙って受け入れるしかない。

 その時、まるで重い鉛を飲み込んでいるような、妙な感覚がした。

 ……ああ。将来結婚するレンブラント様には、私とは違う最高に愛している女性が居る。

 その事実が、どうにも受け入れ難い。

「……レンブラント様には、私とは違う女性が居るのね……?」

「リディア……」

 唇からぽつりとこぼれた問いかけに、イーディスは言葉を失って項垂れた。

 これまでの多くの時間を重ね、何の衒いもなく親友と言える彼女は、私のことをとても大事に思ってくれている。それは、私にだって肌に感じて解っていた。

 だからこそ、ここでは彼女が飲み込んだだろう言葉も。



★♡◆



「リディア。それでは、帰りはくれぐれも気を付けるよう」

 馬車まで送ってくれたけれど、いつものように義務感丸出しな態度を見せるレンブラント様に、私はそっくりそのまま返すようにして、ふいっと横を向いて答えた。