それは、年頃の女の子としては変わっている感性であることは私だって重々わかってはいるけれど、実際にそうなのだから仕方ない。

 彼のことは好ましく思っているけど、向こうから熱烈に愛されることに抵抗がある。

 甘やかされることこそが愛情表現だと思っているイーディスはじめ、同じ年齢の女の子たちには理解してもらえない感情だろうし……なんとも、説明しがたい複雑な思いなのだ。


★♡◆



「……リディア! 帰って来たのか!」

 ダヴェンポート侯爵邸に辿り着き、馬車から降りた私を迎えに出ていた父が両腕を広げている姿を見て、私はうんざりとしてしまって、ついさっき降りたばかりの馬車の中に戻ろうかと思ってしまった。

 ……いえいえ。私は自分が住む邸に戻って来たばかりだと言うのに、これから何処に行こうとしているの。

 リディア。冷静に考えて。

 父を避けて一時的に何処かに行っても、この場所へと帰って来なければならないことには変わりはないんだから。

「……ただいま帰りました。お父様」

 私はなるべく表情を消しつつ腕を広げたままの父の横をするりとすり抜け、ダヴェンポート侯爵邸へと入った。