体を動かそうとして、それを気がついた。前世では実際に心臓に問題があった訳だけど、今世の体にはよくわからない呪いがかけられていただけだった。

「うん。ここが……ドミニオリアで良かったよ」

「どういうこと?」

「この世界に、世界樹の上位にある植物はない。だから、教授たちに頼んで世界樹の傍にシンシアを連れて行った。そして、エルフの血を持つ人たちにお願いして呼びかけてもらったんだ。世界樹に……シンシアを救って欲しいと」

「すごい……私、心臓に問題があるのだとばかり思っていたの。けど、ヒューは調べてくれて……助けてくれたのね。ありがとう……」

 今までもうすぐ死んでしまうこと前提に生きてきた私は「これからも生きられる」という喜びを、どう表現して良いのか迷った。

 だって、私。これからも、ディミトリの近くに居て、これから迫り来る悲劇から、彼を救うことが出来るかもしれないんだよ。

 自分の目から涙がこぼれているのに気がついたのは、ヒューが持っていたハンカチで涙を拭ってくれたからだ。