「シュレジエン先輩はモテ過ぎる人なので、入学当時殺到した女子生徒数人に押し潰されそうになった事件があるんです。だから、彼が話し掛けるまで女子は、シュレジエン先輩には話しかけられないんです」

「は? ……それは、確かに命の危険があるのはわかるが……ああ。それで、シュレジエンからでないと、女子側からはあいつに声を掛けられないってことか」

 ディミトリはヒーローエルヴィンの良くわからないくらいな豪快なモテっぷりに、驚いているようだ。

 そうだよね……けど、そういう設定なんだよ! ティーン向けの恋愛小説だし! ヒーローはモテモテで格好良くないと!

「そうです。そういうシュレジエン先輩不可侵条約は、学術都市ドミニオリアの初等部から大学院まで、女子は全員知っているはずです。けど、シュレジエン先輩自身は結構人見知りな人みたいで、この前に偶然話したことのある私がただ話しやすいだけだと思います」

 エルヴィンはアドラシアンとも、そういう風に親しくなるはずだ。

 困っていた時を救ってあげて唯一話せる女の子は、彼にとっても大事だったはずだから。