「その、不可解な危機察知とリズウィンと同化する件は置いて置いて……なんで、心臓が悪いなら治療しないんだ。普通に学校に来ている場合じゃないだろう。もし、体の不調の原因がわかっているなら、早急に対処すべきだと思う」

 頭もよく効率的に物を考えられる彼らしい意見だと思う。けど、私は首を横に振った。この小説の中のシンシア・ラザルスは、もうすぐ死んでしまう予定だ。

「私の心臓の痛みは、原因不明なの……医者に罹っても異常はないと言われるだけで、お父様もお母様も手を尽くしてくれた。けど、原因はわからないままなの。だから、もし……死んでしまうのなら、残る人生を明るく楽しく生きたいの。近くに居るヒューにも変に、このことで私に気を使ったりして欲しくない」

 思わぬことを告白されたせいか、ヒューは悲しそうに顔を歪ませた。

「シンシア。なんてことだ。けど、どうか治療を諦めないでくれ。出来れば、君の体に負担がかかるリズウィンとの同化も止めて欲しい……お願いだ」

 悲しそうなヒューの表情を見れば、心が痛い。彼だって、友人は私一人しか居ないのに。

「……良いの。ヒュー。私の病気はもう仕方ないし、生きている間はずっと楽しく幸せでいたい!」

「シンシア……そんな事言わないでくれ。嫌だよ」

 あまり感情を見せないヒューは、私の前で初めて涙を見せた。

「ヒュー。泣かないで……ディミトリを助けることが出来て……無駄死にならないのが、救い。私の人生にも、意味があったと思えるもの」