ディミトリは多分それを冗談で言ったんだけど、私は彼が勉強しているところが見たいので即答した。
(します!)
「……え。でも、二年生のシンシアはまだ、習っていないところだと思うよ。俺は別に、なんでも良いから……」
(ダメです! 勉強します!)
「あ。はい……」
私の強い勢いにたじろぎながら、ディミトリは返事をした。
◇◆◇
やばい。彼の挑戦している設問の意味すら、私は全くわからない。
来年の自分がこんなに難しい問題が解けるようになっているという、前向きな妄想すら出来ない。
頭の良いディミトリはさらさらっと驚くような筆運びでノートに数字を書き綴り、私の大嫌いな数学の勉強を進めていた。
「……シンシア。大丈夫? 楽しくは、ないよね?」
暇ではないかと気遣うようなディミトリは、私が中に居ることを当たり前のように受け入れている。
けど、これはかなりの異常事態であることに、チョロインならぬチョロボスのディミトリは気がついていない。
現在、校舎の中は授業中ではあるんだけど、私のように自習組も中には居るようだ。



