「リズウィン様ー! 頑張ってくださーい!!」

 黄色い声がしんとしていた闘技場に響いて、前の席に座っている子たちの中には振り返りディミトリ・リズウィンに声援を送った私の顔を確認した人がちらほらと居た。

 名前を呼ばれたあの人は彼の立場を思えば当たり前だけど、私の方を向いたりしなかった。

 けど、それは別に驚くことでもない。

 はあ……形の良い後頭部やすっきりとした後ろ姿も、尊い……私の推しis今日も最高。

 選択で戦闘系授業を取っている生徒のみ参加の闘技大会は、一学年上でディミトリと接点の少ない私に取っては、たまにある楽しみだった。

 その他の生徒は自由参加だけど、戦闘系授業取ってる男の子ってモテる子が多いから、女生徒で応援目的の子は多い。

「……シンシアってさ。物好きだよね」

 隣に座っていた仲の良い男友達のヒューが、闘技場で今にも模擬戦を開始する二人組の片方へと好意的な声をあげた私に対し呆れた様子で言った。

「あら。ヒュー。この学術都市ドミニオリアに、リズウィン様より格好良い人が居る? ううん。居ない。ディミトリ・リズウィン様が一番。そういう動かし難い事実を考えれば、私は全然物好きじゃないでしょ?」

「それは、何の参考にもならない。シンシア一人の主観で独断による、格好良い人ランキング。現にディミトリ・リズウィンが闘技場に出て来ても歓声をあげたのは、君だけ。周囲を客観的には、見られないの?」

 涼しい顔立ちのヒューは黒縁の丸い眼鏡の真ん中を押して上げて、ディミトリが出て来たからと私がはしゃいだことに、冷めた反応を見せた周囲を見渡した。