「いったい! 何するの! ちょっと、止めてよ!!」
ここまでの展開のもう何もかもが信じられない事態なんだけど、私の長い髪を掴んで引っ張るとスティーブはにやにやとして笑っている。
自分でこんなことを言うのもなんなんだけど、ラザルス家から連れてきたお付きのメイドに念入りに手入れして貰っている、大事な髪なのに……何とか抵抗しようとしたら、ぶちぶちと強い力に耐えきれなかった髪が千切れる嫌な音がした。
「……いや、確かヒューバート博士が、シンシアのこの髪好きだったなと思い出した。俺を恨んで、あの人が闇堕ちしてくれないと困る。主役二人が旅に出る物語が進まないじゃん」
「……ヒューが? そんなの、言われたことないけど! もう、やめて離してよ!!」
長い髪を乱暴に掴まれて、私の足は宙に浮き出してた。頭も痛いけどこのままだと私、アドラシアンとエルヴィンの狂信者に殺されてしまう……。
「当たり前だろ。あの人は、唯一の友人シンシア・ラザルスを喪ってからようやく彼女を異性として好きだったことに気がつくんだ。そして、彼女を生き返らせるために、その世界をも滅ぼすことに決めた」
「もうっ!!! もし世界滅んだら、あんたも……アドラシアンやエルヴィンだって、死んじゃうんだけど!? わかってないんじゃない!!」
私は今日に限ってディミトリにもヒューにも、ここに来ることを言って来なかったことを後悔した。
頭部に感じるあまりの痛みで、気が遠くなりそう。
「滅ばないよ。物語の主人公たちって、そういうものだろ? お前。哀しい過去を持つディミトリを守りたいんなら、一番に離れなきゃいけないのはお前だったんじゃねえの?」
せせら笑うような笑みを見て、私はキッと睨みつけた。
「私の人生に……何の事情も知らないあんたが、偉そうに口を出さないで!」
顔を近づけて来たスティーブのいけすかない顔に、両手で爪を立てて引っ掻いた。どう見ても非力な私がそんなことをすると思ってなかったのか、スティーブは目を閉じて怯んだ様子だった。
ここまでの展開のもう何もかもが信じられない事態なんだけど、私の長い髪を掴んで引っ張るとスティーブはにやにやとして笑っている。
自分でこんなことを言うのもなんなんだけど、ラザルス家から連れてきたお付きのメイドに念入りに手入れして貰っている、大事な髪なのに……何とか抵抗しようとしたら、ぶちぶちと強い力に耐えきれなかった髪が千切れる嫌な音がした。
「……いや、確かヒューバート博士が、シンシアのこの髪好きだったなと思い出した。俺を恨んで、あの人が闇堕ちしてくれないと困る。主役二人が旅に出る物語が進まないじゃん」
「……ヒューが? そんなの、言われたことないけど! もう、やめて離してよ!!」
長い髪を乱暴に掴まれて、私の足は宙に浮き出してた。頭も痛いけどこのままだと私、アドラシアンとエルヴィンの狂信者に殺されてしまう……。
「当たり前だろ。あの人は、唯一の友人シンシア・ラザルスを喪ってからようやく彼女を異性として好きだったことに気がつくんだ。そして、彼女を生き返らせるために、その世界をも滅ぼすことに決めた」
「もうっ!!! もし世界滅んだら、あんたも……アドラシアンやエルヴィンだって、死んじゃうんだけど!? わかってないんじゃない!!」
私は今日に限ってディミトリにもヒューにも、ここに来ることを言って来なかったことを後悔した。
頭部に感じるあまりの痛みで、気が遠くなりそう。
「滅ばないよ。物語の主人公たちって、そういうものだろ? お前。哀しい過去を持つディミトリを守りたいんなら、一番に離れなきゃいけないのはお前だったんじゃねえの?」
せせら笑うような笑みを見て、私はキッと睨みつけた。
「私の人生に……何の事情も知らないあんたが、偉そうに口を出さないで!」
顔を近づけて来たスティーブのいけすかない顔に、両手で爪を立てて引っ掻いた。どう見ても非力な私がそんなことをすると思ってなかったのか、スティーブは目を閉じて怯んだ様子だった。



