そうだよ。心臓の不調という命の危険が去って、彼と両思いになれて完全に浮かれていて思いもしなかった。

 もし、小説通りの展開になると、ディミトリはドミニオリアに居られなくなってしまう。

 慌てて私の体を囲うようにあったスティーブの腕から逃れようと、体を動かした。

「おっと……シンシア・ラザルス君は行かせない。外伝のIFストーリーでは、植物系の呪いってことで生き返っていたけど、普通に死んだらどうなるんだろうなあ……」

「離して!! 離してよ!! 信じられない。私を殺すつもりなの?」

 どうやらスティーブは、私を彼の手で始末して物語を進めてしまうつもりらしい。信じられない、何考えてるの!

「今更何言ってんだ。どうせ死ぬはずだったんだから、同じことじゃないか?」

「全然違うわよ! さいってい!! もう、早くどこかに行って!」

 私は出来るだけ憎しみを込めて睨みつけたけど、彼は余裕のある笑みで微笑んだ。

 待って。私が何の救いもない方法で、死んでしまったら……ディミトリはどうなるの。そうよ。ヒューは……私のことをただ一人の友人と言ってくれたヒューも、闇に堕ちてしまうの?

 どうしよう!

「シンシア・ラザルス。ここまで上手く行ってたと思うけど、詰めが甘かったな……アドラシアンとエルヴィンという、この世界で一番に神聖な二人に殉じてくれ」