第4話金色の涙
「金色の涙って、知ってる?」
ジュディが唐突にそう言ったとき、私は息を止めた。
彼女が笑っていなかったからだ。
いつもと同じ香水の匂い、同じ化粧の厚さ、でも表情がどこか違った。
「昔ね、たった一人だけ、金色の涙を流した子がいたの」
「……金色?」
「ええ。それはね、“世界でただ一つの本当の涙”だったのよ」
ジュディの言葉には、不気味な甘さがあった。
それが嘘なのか本当なのか、見極めようとしたけれど、
そのときの私はただ、胸がざわつくのを感じていた。
「その涙には、願いを叶える力があるって言われているわ。
呪いでも、病でも、死さえも癒す……完全な浄化の涙」
「それって……魔法?」
「いいえ。奇跡よ。人間にはできないことを、神にさえできなかったことを、その涙はやってのけたって」
私は何も言えなかった。
ただ、金色の光のイメージだけが、脳裏にぼんやりと浮かんでいた。
「でもね、エリア」
ジュディの声が、急に現実に引き戻した。
「その涙を流した子は、もういないの」
「……死んだの?」
「さあ。人々がその子をどう扱ったか、想像できるでしょ?」
私は、何も言えなくなった。
想像した。
黒い涙だけでも、私はこうして閉じ込められている。
なら、願いを叶える金の涙を持った子は——
それこそ、世界中から切り刻まれるように“欲望”を向けられただろう。
「伝説はね、時々真実よ。
でも、真実だったら……もっと恐ろしいものになるの」
ジュディは笑って部屋を出ていった。
残された私は、ぽつんとその場に立ち尽くしていた。
その夜。
私は夢を見た。
真っ暗な水の底で、私の涙が黒く沈んでいく。
でもその中央に、一粒だけ金色の光が漂っていた。
誰かの涙だったのかもしれない。
あるいは——私自身が、いつか流すことになる涙かもしれない。
もし、そんな涙が本当にあるなら。
もしそれを、誰かのために流せるなら。
そのときだけは、売られることなく、
“誰かを救うため”に、泣けるのかもしれない。
私はそう思って、また眠りについた。
「金色の涙って、知ってる?」
ジュディが唐突にそう言ったとき、私は息を止めた。
彼女が笑っていなかったからだ。
いつもと同じ香水の匂い、同じ化粧の厚さ、でも表情がどこか違った。
「昔ね、たった一人だけ、金色の涙を流した子がいたの」
「……金色?」
「ええ。それはね、“世界でただ一つの本当の涙”だったのよ」
ジュディの言葉には、不気味な甘さがあった。
それが嘘なのか本当なのか、見極めようとしたけれど、
そのときの私はただ、胸がざわつくのを感じていた。
「その涙には、願いを叶える力があるって言われているわ。
呪いでも、病でも、死さえも癒す……完全な浄化の涙」
「それって……魔法?」
「いいえ。奇跡よ。人間にはできないことを、神にさえできなかったことを、その涙はやってのけたって」
私は何も言えなかった。
ただ、金色の光のイメージだけが、脳裏にぼんやりと浮かんでいた。
「でもね、エリア」
ジュディの声が、急に現実に引き戻した。
「その涙を流した子は、もういないの」
「……死んだの?」
「さあ。人々がその子をどう扱ったか、想像できるでしょ?」
私は、何も言えなくなった。
想像した。
黒い涙だけでも、私はこうして閉じ込められている。
なら、願いを叶える金の涙を持った子は——
それこそ、世界中から切り刻まれるように“欲望”を向けられただろう。
「伝説はね、時々真実よ。
でも、真実だったら……もっと恐ろしいものになるの」
ジュディは笑って部屋を出ていった。
残された私は、ぽつんとその場に立ち尽くしていた。
その夜。
私は夢を見た。
真っ暗な水の底で、私の涙が黒く沈んでいく。
でもその中央に、一粒だけ金色の光が漂っていた。
誰かの涙だったのかもしれない。
あるいは——私自身が、いつか流すことになる涙かもしれない。
もし、そんな涙が本当にあるなら。
もしそれを、誰かのために流せるなら。
そのときだけは、売られることなく、
“誰かを救うため”に、泣けるのかもしれない。
私はそう思って、また眠りについた。
