波打ち際にざざ、と水が寄ってくる。まだ陽が高く、海面が光を反射してきらきらと輝いていた。
砂浜へと繋がる階段から2人降りてきた。
男と青年である。
男は長身で、話し方から明朗快活な印象を受ける。
対して小柄な青年は無言で頷くことで相槌を打っていた。2人を包む風はあたたかい。
水辺へ着くなり男は靴を脱ぎだして、足先を水へと付けた。まだ冷たい、と声を上げる。
その後、思い付いたように貝殻を探し始めた。すぐきれいな物を見つけたらしい。
少し遠くで海を見る青年を呼んで、戦利品を上げた。次から次に探し回り、子供のようにはしゃいでいた。それを、青年はただ見つめている。
やがて、大きな手のひらいっぱいに貝殻を持って走り寄ってきた男に、青年は口を開いた。
「先生、ぼくは今から……“せがわなぎ”で話します」
ざざ、と水が捌けていく。海だけが、その時の彼らを知っている。
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