「事件のあった時に、僕は既に救世の旅を二回やり遂げていました。汚名を着ることに躊躇いと大きな葛藤はありました。僕へ向けられた多くの期待を裏切り、失望されるだろうと思いました」

 ジュリアスが泣いていると気がついたのは、その時だ。

 気がつけば薄い緑色の瞳から、涙がこぼれ落ちていた。

「ですが……それは、我慢出来ると思いました。人の記憶は時が経てば、風化してしまうものです。王族の落胤は良くあることです。現にその時の殿下の子は、とある傍系の貴族の家の養子に入りました……僕はあの時の選択を、今も後悔はしていません」