「おい!」

 黙々とご飯を食べていたのに肩をぐいっと強く引っ張られて驚きはしたけど、怒りの感情は浮かんで来なかった。

 実際のところ馬鹿王子に対して、私は諦めの気持ちが強い。

「あの……何の用ですか?」

 冷めた口調で彼に問いかければ、エセルバードはいかにも不機嫌そうに言葉を放った。

「なんだよ。俺が呼んでいるのに……っ、まあ、それは良い。少し、話せないか」

 面白くなさそうに視線で近くの木の下を示したので、あの場所で私と二人で話したいらしい。

 ……一体、何を? 話すことなんて、思いつかないのに。

「あの……ジュリアスにも同席して貰って良いですか? 私。貴方のこと、信用していないんです」

 何一つ。まるっきり。

 それに、私は異世界から召喚された聖女なので国民でもないし、王族と言えどこんな乱暴者を敬う必要性については完全にゼロ。

 慣れないだろう冷めた視線と口調にエセルバードは眉を寄せて、無言で強引に手を引いた。不本意ではあった。

 けれど、ここで揉めたりして誰かが助けに来てくれたとしても、その人が板挟みになってしまう。