あれだけジュリアスに言って貰っても、エセルバードはうるさいと一蹴するだけで何も変わらないのに。

 それって……若い頃に王に奪われた、亡くなった好きな人の息子だったから? だとすると、ジュリアスが聞く気なんてゼロのわからず屋に対してあんなにまで甘い理由もわかってしまう。

「……聖女様。いかがなされましたか?」

 私たちがやって来ていた雑貨店の店長は、整えられた白い髭が素敵な上品なおじさまだ。私は一人だけ集団と離れて見ていたので、気にしてくれたらしい。

 店内にあるいくつものガラスで覆われた陳列棚は綺麗に整頓されていて、高価な道具などが置かれているようだ。

 どれもこれも値札を見れば、結構な金額。

 不思議なんだけど慣れした親しんだ日本語でも英語でもないけど、私はこの国の文字を読み取ることが出来る。

 それは、なんだか不思議な感覚だった。

 この世界に来た時に掛けて貰った、あの魔法のおかげだとはわかりつつ……異世界からやって来た私が、会話も出来て文字も読めてしまうなんて、便利すぎるけど一体どういう原理なんだろう。