ジュリアスは私に苦笑いをしたけど、とてもそれに笑い返すような心境にはなれなかった。

「いいえ……私が子どもなんです。ジュリアスの言う通りです。私は……貴方に相応しくないから……」

 ジュリアスは、三回も世界を救った英雄だ。不祥事があったとは言えど、ジュリアスの部下は心から彼を信頼をしているとすぐに理解出来てしまう。

 そんなすごい人は異世界から来た聖女ってだけで自分で何も出来ない私なんかを、好きにはならないんだろう。

 座ったまま項垂れて落ち込んだ様子を見た私を見て、ジュリアスは跪き手を握った。右手を大きな両手で包み込むと、私の顔を覗き込んで目を合わせた。

「いいえ。そうではありません。住む世界を変えるということは、もう二度と戻れないということです……ただ嫌なことから、逃げているだけではいけない。僕を好きだと言ってくれて、嬉しいと思いました。ただ……数年後。十数年後になれば、この選択を後悔しないかと心配になります」

 この時、私は生意気だけど、ジュリアスは何でも持っているように見える人なのに、優し過ぎて損ばかりしているんじゃないかと心配になった。