ふるふると震えて引きつる口元を手で押さえつつ私は無理ににっこり笑ったら、向こうは変な表情になって部屋の中に入って行った。

 エセルバードにはお付きの人も一応は居るんだけど、その人たちは控え室のような部屋へ入ったようだ。大変そう。ご苦労が忍ばれる。

 やれやれと肩を竦めた私が部屋に入ろうとしたところで、後ろから声がしたので振り向いた。

「聖女様。荷物をお持ちしたんですが……今、大丈夫ですか?」

「あ。ジュリアス。ありがとう!」

 私の荷物を手に部屋まで来てくれたのは薄暗い室内でも、彼の周囲の空気がきらめくような錯覚が起こるイケメン騎士ジュリアス。

 さっきとは私のテンションが天と地ほども違うのは、私の中の好感度がそのくらい違うだけの話です!

「……殿下に、何か言われましたか?」

 前の姿であればジュリアスは私に暴言を吐く度にエセルバードに説教してくれていたんだけど、今は何の役職もない騎士ということになっているから口は出せない。

 だから、ジュリアスは私が不快な思いをしていないか、いつも気にしてくれている。