団長の言葉を不思議に思った私のテントの幕が上げられて、馬鹿王子エセルバードが現れた!
 
 しっ……信じられない。普通なら今は、絶対こいつとエンカウントしないはずなのに。

 うら若き乙女のテントの幕を断りもなく上げるなんて……着替え中だったらどうするつもりなのよ!

「あれ? ジュリアスは、ここには居ないのか? こいつは誰だ……なんだ。ジュリアスにやけに良く似ているが……」

 ずかずかと無遠慮に私のテントに入り眉間に皺を寄せつつ若返った団長をしげしげと見たエセルバードに、私は「どう説明したら良いんだろう」と冷や汗をかきつつ考えていた。

「父は急用で城へと。僕は彼の代理として参りました。ジュリアスの息子です」

 団長がここで堂々と嘘をついたので、私はぽかんとしてしまった。え。だって、私の『聖女の祝福』の能力がこれでようやく判明したのだから、それをエセルバードに伝えれば良いだけなのに……。

「なんだと……俺は聞いてないぞ! あいつは今まで一度も結婚もしていないし、子どもの話だって聞いたことはない。だが……親子と言えるほどに似ているな。そっくりだ」