案の定、Eは納得した。わかったって、小さく言って悲しそうにはしていたけど、それ以上なにも追求することなく、俺の前から去っていった。
「……じゃあ、行こか」
体育館裏に残された俺がそう言うと、前方に見える樹木から伸びた影がビクッと弾む。
そこそこ大きな声を出したから、ちゃんと聞こえたんやろう。太めの幹から躊躇いがちに姿を見せたのは優希やった。
「……バレた?」
「いつものことやろ」
どこまでアンテナを張ってるんか知らんけど、優希は俺が告白される時、必ずと言っていいほどついてきてる。最初こそ驚きはしたけど、これにももう慣れた。だから優希がおるの前提で告白を受ける。
俺が歩き出すと、優希は小走りで追いかけてくる。そして俺の横に並ぶと、歩幅を合わせて歩き出した。その表情は安堵に満ちている。俺が断ったのを確認したおかげやろう。
「例の撮影、明日やったよね?」
「撮影いうか、取材な」
「たっちゃんの家でやるんでしょ? 楽しみやね、あたしも見に行くから」
「ああ……わかった」
コンクールで優秀な成績を収めていると、SNSやネットニュースで話題になる。そこから学校を通じて連絡が来て、テレビの出演を頼まれたりする。今回のは、前のコンクールの審査員に、直接頼まれたやつ。若き才能を深掘りする、音楽雑誌の取材に応じてくれないかと言われた。
俺は「はい」って、二つ返事で答えた。俺も見たことがある、名の知れた音楽雑誌の取材。断るなんて選択肢があるはずない。
今までずっと、指を咥えて眺めるだけやった。そんな羨望の世界の中心に、自分がおる。見せつけたくて仕方がない。誰に? どこまで? ……そうやな、天まで届くように。
「……じゃあ、行こか」
体育館裏に残された俺がそう言うと、前方に見える樹木から伸びた影がビクッと弾む。
そこそこ大きな声を出したから、ちゃんと聞こえたんやろう。太めの幹から躊躇いがちに姿を見せたのは優希やった。
「……バレた?」
「いつものことやろ」
どこまでアンテナを張ってるんか知らんけど、優希は俺が告白される時、必ずと言っていいほどついてきてる。最初こそ驚きはしたけど、これにももう慣れた。だから優希がおるの前提で告白を受ける。
俺が歩き出すと、優希は小走りで追いかけてくる。そして俺の横に並ぶと、歩幅を合わせて歩き出した。その表情は安堵に満ちている。俺が断ったのを確認したおかげやろう。
「例の撮影、明日やったよね?」
「撮影いうか、取材な」
「たっちゃんの家でやるんでしょ? 楽しみやね、あたしも見に行くから」
「ああ……わかった」
コンクールで優秀な成績を収めていると、SNSやネットニュースで話題になる。そこから学校を通じて連絡が来て、テレビの出演を頼まれたりする。今回のは、前のコンクールの審査員に、直接頼まれたやつ。若き才能を深掘りする、音楽雑誌の取材に応じてくれないかと言われた。
俺は「はい」って、二つ返事で答えた。俺も見たことがある、名の知れた音楽雑誌の取材。断るなんて選択肢があるはずない。
今までずっと、指を咥えて眺めるだけやった。そんな羨望の世界の中心に、自分がおる。見せつけたくて仕方がない。誰に? どこまで? ……そうやな、天まで届くように。
