「わざわざ大会の後に来んでも。疲れてるやろ」
「……たっちゃん、またええ結果出すんやないかって。その日のうちに、おめでとう言いたかったから」
会場の大阪から急いで帰ってきたに違いない、そうやないとこの時間、明石におるはずがないから。おめでとうなんて、通話アプリ一つで済む。それやのに、優希は顔が見たかっただの、直接話したかっただの、なにかにつけて俺に会いに来る。以前、スマホの連絡だけで十分やろって話したら、目を潤ませて冷たいと言われた。その後、優希の親から俺の親に伝わり、注意された。だからもう、意見するんはやめた。
「そうか、ありがとう」
本心かどうか、自分でもようわからん言葉が流れる。そんな俺の返事に、優希は残念と不服を混ぜたような顔で肩を落とした。それから優希は室内を二、三歩進むと、水色のカバーがかかった枕と、四角く畳まれたタオルケットの間に腰を下ろした。
優希が座った寝具の横には、俺の背より少し低いトロフィーケースが置いてある。茶褐色の木製板に支えられた正面のガラス、その中央についた銀色の取手。寄り添うように二つ並んだそれの片方を持ち、手前に開けば、今までの功績が露わになる。
キラキラと光る、金銀銅のさまざまな大きさや形をしたトロフィーたち。紙袋から出した新入りを一番上の段に飾り、ガラスの扉を閉めて、改めて全容を確かめてみる。
「増えたね、トロフィー、カッコええね」
優希の褒め言葉に誇らしげに頷いてみせる。ずっと憧れてた。自分の努力が、才能が、触れる物体として、確かに存在することを。
左側はすべて埋まった。縦一列、四段綺麗に並んでる。空っぽの右側が埋まるんはいつやろう。両親が用意してくれたこのケースを、必ず満たさなければ。
「……たっちゃん、またええ結果出すんやないかって。その日のうちに、おめでとう言いたかったから」
会場の大阪から急いで帰ってきたに違いない、そうやないとこの時間、明石におるはずがないから。おめでとうなんて、通話アプリ一つで済む。それやのに、優希は顔が見たかっただの、直接話したかっただの、なにかにつけて俺に会いに来る。以前、スマホの連絡だけで十分やろって話したら、目を潤ませて冷たいと言われた。その後、優希の親から俺の親に伝わり、注意された。だからもう、意見するんはやめた。
「そうか、ありがとう」
本心かどうか、自分でもようわからん言葉が流れる。そんな俺の返事に、優希は残念と不服を混ぜたような顔で肩を落とした。それから優希は室内を二、三歩進むと、水色のカバーがかかった枕と、四角く畳まれたタオルケットの間に腰を下ろした。
優希が座った寝具の横には、俺の背より少し低いトロフィーケースが置いてある。茶褐色の木製板に支えられた正面のガラス、その中央についた銀色の取手。寄り添うように二つ並んだそれの片方を持ち、手前に開けば、今までの功績が露わになる。
キラキラと光る、金銀銅のさまざまな大きさや形をしたトロフィーたち。紙袋から出した新入りを一番上の段に飾り、ガラスの扉を閉めて、改めて全容を確かめてみる。
「増えたね、トロフィー、カッコええね」
優希の褒め言葉に誇らしげに頷いてみせる。ずっと憧れてた。自分の努力が、才能が、触れる物体として、確かに存在することを。
左側はすべて埋まった。縦一列、四段綺麗に並んでる。空っぽの右側が埋まるんはいつやろう。両親が用意してくれたこのケースを、必ず満たさなければ。
