授業が終わって、当番やった掃除が済むと、カバンを持って教室を出る。すると当たり前のように、優希が廊下で待ってるわけやけど。
今日は優希だけじゃなかった。優希の隣にもう一人、黒髪をツインテールにした女生徒が立っている。
俺が教室から出てきたことに気づくと、パッと顔を上げて、目が合うと頬を染めた。
ああ、なるほどなって、今の状況を理解する。
「あ、あの、水島くん……ちょっといい?」
彼女は俺に歩み寄ってくると、上目遣いで甘えるように言った。
化粧をしてる。作り物のクリッとした瞳。顎の下に握った両手を添えて、可愛い女の子アピールで、少しでも成功率を上げようとしているみたいや。
優希は廊下の窓際の壁を背に立ったまま、ただ黙ってじっとこちらを見てる。
優希の告白を受けたわけじゃない。だから、なにも言えんのやろう。けど、目は口ほどに物を言う。圧がすごい。この子と優希は、別に元々仲良くもないんやろう。さっきまで隣り合って立っていたというのに、二人とも真顔でまったくしゃべってもいなかったから。
「……誰?」
「あ、あたし、隣のクラスのね――」
名前なんかどうでもええ。なんで認識されてもない相手を、堂々と連れ出すことができるんかって、疑問なだけ。
「なんか用?」
「ここではちょっと……話しにくいから」
「わかった」
そう言われたから、俺は女生徒Eが歩いてく後に続く。
なんでEかって? Aから数えてEは五番目やから。こんな誘いを受けるんが五回目やから、そう心の中で記号を割り振っただけ。
放課後の廊下は人がまばらやけど、一緒に掃除していた奴らや、通りすがりの生徒が俺に注目する。後ろの方から感じるいくつもの視線、だけど、その中で一番しつこいのは、やっぱり優希やな。
ついこの間、部屋から急に追い出してしまって、落ち込んでるかと思いきや、平気で顔を見せて相変わらず登下校をともにする。それを見上げた根性って言ったら嫌味になるやろうか。
そんなことを考えながら、彼女に連れていかれたのは、体育館の裏側やった。芸がない。みんな同じことばっかりする。せめて屋上とかないんか。うちの学校は屋上に鍵がかかっていて、出入りできんようになってるけど、俺やったら……俺がもし、学校で告白するなら、そんな鍵くらい壊すくらいの気概を見せる。
まあ、もうそんな対象おらんから、証明しようもないけど。
今日は優希だけじゃなかった。優希の隣にもう一人、黒髪をツインテールにした女生徒が立っている。
俺が教室から出てきたことに気づくと、パッと顔を上げて、目が合うと頬を染めた。
ああ、なるほどなって、今の状況を理解する。
「あ、あの、水島くん……ちょっといい?」
彼女は俺に歩み寄ってくると、上目遣いで甘えるように言った。
化粧をしてる。作り物のクリッとした瞳。顎の下に握った両手を添えて、可愛い女の子アピールで、少しでも成功率を上げようとしているみたいや。
優希は廊下の窓際の壁を背に立ったまま、ただ黙ってじっとこちらを見てる。
優希の告白を受けたわけじゃない。だから、なにも言えんのやろう。けど、目は口ほどに物を言う。圧がすごい。この子と優希は、別に元々仲良くもないんやろう。さっきまで隣り合って立っていたというのに、二人とも真顔でまったくしゃべってもいなかったから。
「……誰?」
「あ、あたし、隣のクラスのね――」
名前なんかどうでもええ。なんで認識されてもない相手を、堂々と連れ出すことができるんかって、疑問なだけ。
「なんか用?」
「ここではちょっと……話しにくいから」
「わかった」
そう言われたから、俺は女生徒Eが歩いてく後に続く。
なんでEかって? Aから数えてEは五番目やから。こんな誘いを受けるんが五回目やから、そう心の中で記号を割り振っただけ。
放課後の廊下は人がまばらやけど、一緒に掃除していた奴らや、通りすがりの生徒が俺に注目する。後ろの方から感じるいくつもの視線、だけど、その中で一番しつこいのは、やっぱり優希やな。
ついこの間、部屋から急に追い出してしまって、落ち込んでるかと思いきや、平気で顔を見せて相変わらず登下校をともにする。それを見上げた根性って言ったら嫌味になるやろうか。
そんなことを考えながら、彼女に連れていかれたのは、体育館の裏側やった。芸がない。みんな同じことばっかりする。せめて屋上とかないんか。うちの学校は屋上に鍵がかかっていて、出入りできんようになってるけど、俺やったら……俺がもし、学校で告白するなら、そんな鍵くらい壊すくらいの気概を見せる。
まあ、もうそんな対象おらんから、証明しようもないけど。
