第一話『限界OL、覚醒の深夜』
謎の男は、高いビルの上から双眼鏡を使って、何かを探している。
「見当たらないな。幻蝶。」
場面は変わり、どこかのオフィス。
デスクには何本目かわからないエナジードリンクの空き缶。
キーボードを叩く乾いた音と時計の秒針の音が部屋に響く。
殺風景なオフィスの一角。奥に無数のデスクがあるが私のデスクは入り口の手前にある。
仕分け前の大量の書類に今にも埋もれてしまいそうになりながら、目の前のデータをまとめる作業を黙々とする。
現在深夜2時過ぎ、部長から頼まれた(押しつけられた)明日提出の資料は手付かず、絶望的な状況に発狂する気力もない。
私は、藤井貴子(32歳)株式会社B&カンパニーの企画部に所属している。この会社はいわゆるブラック企業だ。サビ残、セクハラ、パラハラ、有給は取れず知らない間に消費され、給与は薄給。語りだすときりがない、この世の黒を集結させて漆黒企業だと思う。
私のデスクには、後輩ができなかったデータ資料のまとめの途中と同僚が押しつけた大量の資料の仕分け、極めつけは定時後に部長が押しつけてきた、明日までの企画資料を吹っ掛けられたことだ。
(回想)
鬼瓦部長が定時後に声をかけてきた。
「おい、藤井この企画書明日までに提出だ。」
今までに見たことのない不機嫌な部長に、面倒だなと思いながら答える。
「明日は無茶ですよ。しかもこれ白紙でとても明日までは無理ですよ。」
「俺に口答えするのか。そんなもの、会社に残ればいくらでもできるだろう。もちろんタイムカードは切れ、俺が上に怒られて最悪お前も首だ。それに若いうちは苦労すればするほどいいんだぞ。」
こちとら、彼氏もいない婚期の危うい三十路ですがこのくそ上司と思うながら聞く。それに会社もどこまでも腐ってやがる……そう思いながら、言い返す気力や勇気もないまま白紙の企画書を受け取った。
(回想終了)
前者2人はともかく、部長の企画資料に関してはありえない。白紙の企画書を前日に渡すかね……。
徹夜続きのせいなのか、この最悪の現状のせいなのか、分からないが目の前が霞んできた。
顔を洗いに洗面室へ来たけど鏡に映った顔がひどすぎた。
(目の下のクマ、顔には疲労の色が濃く、メガネが少しずれている。)
「はあ……この10日くらい、まともに眠れてない気がする。徹夜……そして徹夜。一体いつになったら人間らしい生活を送れるのかな」
オフィスに戻り席へ着く。
「もう、無理だ……(スマホを無表情で見る)午前2時……まだ終わらない。なんなら企画書の提出は今日だ。目の前の書類は山積みのまま、今日までの企画書は手付かず」
目の前の仕事に眩暈がして、胃が痛み手で押さえる。
「胃が痛い。頭は痛いし、もう何も考えられない。この資料、誰か代わりに作ってくれないかな……」
(無意識のうちに、強い願いが口から漏れるように呟かれる)
「助けて……」
濁っていた貴子の瞳の奥に、突然、鮮烈な青白い光が宿る。その光が瞳孔から溢れ出すように広がり。
高周波の電子音、空間が歪むような感覚に眩暈がしたする。
しばらくしたら、貴子のデスク全体に散乱していた書類とPCモニターが突然に青と金色の光を放ち始め辺りには蝶が舞う。
「えっ。なに?」
貴子は目の前に起こっているのか、わからなかった。
書類が意志を持ったかのように、宙に浮き上がり、高速で分類・整理され、文字が自動で打ち込まれていく。タイプライターが超高速で動くようなエフェクトと音が鳴り響く。
キーボードが超高速で動く、電子的な加工音がオフィスに響く。
貴子は口を半開きにして呆然と見ている「な、なに……これ……?」
数秒後、デスクの上には、完璧に完成された企画書と整然と並べられた書類の山。まるで誰かが魔法を使ったかのようだ。
私は震える手で企画書を手に取り、内容を確認し完璧な仕上がりに驚愕した。しかし同時に疲労で思考が追いつかない、あまりものうまく出来上がってた資料に見とれる。終わっているのは、夢なのではないかと思いながら、一気に確認していく。
データ、仕訳けた資料、企画書まで仕上がっていた。
「……ありえない……とうとう私の脳もこの漆黒の企業のせいでおかしくなったのかも……」
何はともあれ、目の前の仕事は終わった。久しぶりの日の出前に仕事が片付いたのでオフィス内の給湯室へ貴子はコーヒーを入れようと貴子は向かった。
貴子がコーヒーを入れようとしていると、紙コップのディスペンサーは空だった。
(独り言)「はあ……もう補充する気力もないわ……((誰か、コップ、出してくれないかな))……」
するとカラン、と小さな音がした。貴子が呟いた直後、音のする方を見ると紙コップディスペンサーから、まるで意思があるかのように新しい紙コップがポトリと落ちてきた。
紙コップを拾い上げ、一瞬固まる)「……え、今……?」
(周りを見渡す、しかし誰もいない。再びディスペンサーを見るが、何の変化もない。)
「気のせいよね……やっぱり疲れてるのね」
コーヒーを入れた後、給湯室で一口飲んでデスクに戻る。
文具を片付けようと、デスクの引き出しを開けると、中から出てきた書類のコピーを頼まれていたことを忘れてしまい、コピーすることになった。
「この資料のコピーをすかっり忘れてた。さっさと終わらせんと」
コピーを始めると、コピー機がコピー中で紙詰まりを起こし、警告音が鳴っている。オフィスにエラー音が鳴り響く。
「もう!こんな時に限って!」
イライラしながら紙詰まりを直そうとするが、手が震えてうまくいかない。
「お願い、早く直って……早く休みたいのよ……!」とコピー機のモニターを見るとエラー表示が出てきていた。
その瞬間にガコンと大きな音、青白い光がコピー機から漏れ、光が収まった後コピー機は正常に動き出した。
まるで貴子が念じた途端、コピー機が一人でに動き出し詰まっていた紙が勢いよく排出されたかのようだった。コピー機の画面を見たらエラーが表示は解除されていた。
再び呆然とする「な、なんで……?」さっきまでは確かに紙詰まりを起こしていたのに、私はコピー機をまじまじと見るが、普通のコピー機にしか見えない。
「疲労のせい……?うん、きっと疲労のせいよ。もう何が起こっても驚かないわ……」
その日は、自分のデスクのひざ掛けをかぶり眠りについた。
数時間後、何事もなかったかのように始業時間が来る。
朝。貴子はもちろん定時で出勤、なんなら泊まりだ。
そして朝一で完璧な企画書を部長に提出しているところだ。
私の部長はこいつ、鬼瓦 厳(おにがわら げん)。内の部署の一番のストレスの元凶である。
こいつはパワハラの権化だ。理不尽な仕事の押しつけ、言い訳、こいつの指示に従わないと怒鳴り散らしお叱りタイムという名の生産性のない時間が数時間続く。
鬼瓦厳は企画書を見るや否や上機嫌になる。
企画書を見て満足げに頷く「おう、藤原! 今回の企画書は良い出来だ。徹夜で頑張った甲斐があったな!俺が新人の頃はな、徹夜して当たり前だったんだ。お前も身をすり減らして頑張れよ」
私は力なく作り笑顔で答える「はい、部長。頑張ります……」
作ったのは私のようで私じゃないけどな、とおもいながら部長に愛想笑いする。
こちとら過労死寸前だってのと思いつつデスクの戻る。
貴子はデスクに山積みの資料を片付けている。
その周囲には、キラキラと輝く無数の光る蝶のようなものが、ふわりと舞い上がっている。貴子や周囲の人には見えていない。
羽ばたくような、しかし神秘的な微かな音を立て蝶は、貴子の周りに飛び回る。
「なんだか、いつもより身体が軽い感じ……。こんな疲労の極致なのに……」
(資料の片付けを終えて、伸びをする。ふと、窓の外を見ると朝の景色が少しきれいに見えた。)
「……今日こそ、定時で帰るぞ……!」
オフィスビルが朝の日差しに照らされている。そのビルの上空を、貴子のデスクにいたのと同じ光る蝶が無数に舞い上がっていく。
謎の男があるビルの上から双眼鏡を覗く。
「幻蝶か……誰かが神通力を覚醒させたのか。」
神通力、それは太古の昔から日本の伝統的な特異な能力。それを発現するには、血筋や修行など様々だが、近代日本のほとんどは、強烈で重たい感情による覚醒だ。
にやりと笑う謎の男は、静かに朝日の光に溶けて消えていく。
そして貴子は今日も株式会社B&カンパニーで社畜する。しかし、それは波乱の非日常の始まりに過ぎなかった。
謎の男は、高いビルの上から双眼鏡を使って、何かを探している。
「見当たらないな。幻蝶。」
場面は変わり、どこかのオフィス。
デスクには何本目かわからないエナジードリンクの空き缶。
キーボードを叩く乾いた音と時計の秒針の音が部屋に響く。
殺風景なオフィスの一角。奥に無数のデスクがあるが私のデスクは入り口の手前にある。
仕分け前の大量の書類に今にも埋もれてしまいそうになりながら、目の前のデータをまとめる作業を黙々とする。
現在深夜2時過ぎ、部長から頼まれた(押しつけられた)明日提出の資料は手付かず、絶望的な状況に発狂する気力もない。
私は、藤井貴子(32歳)株式会社B&カンパニーの企画部に所属している。この会社はいわゆるブラック企業だ。サビ残、セクハラ、パラハラ、有給は取れず知らない間に消費され、給与は薄給。語りだすときりがない、この世の黒を集結させて漆黒企業だと思う。
私のデスクには、後輩ができなかったデータ資料のまとめの途中と同僚が押しつけた大量の資料の仕分け、極めつけは定時後に部長が押しつけてきた、明日までの企画資料を吹っ掛けられたことだ。
(回想)
鬼瓦部長が定時後に声をかけてきた。
「おい、藤井この企画書明日までに提出だ。」
今までに見たことのない不機嫌な部長に、面倒だなと思いながら答える。
「明日は無茶ですよ。しかもこれ白紙でとても明日までは無理ですよ。」
「俺に口答えするのか。そんなもの、会社に残ればいくらでもできるだろう。もちろんタイムカードは切れ、俺が上に怒られて最悪お前も首だ。それに若いうちは苦労すればするほどいいんだぞ。」
こちとら、彼氏もいない婚期の危うい三十路ですがこのくそ上司と思うながら聞く。それに会社もどこまでも腐ってやがる……そう思いながら、言い返す気力や勇気もないまま白紙の企画書を受け取った。
(回想終了)
前者2人はともかく、部長の企画資料に関してはありえない。白紙の企画書を前日に渡すかね……。
徹夜続きのせいなのか、この最悪の現状のせいなのか、分からないが目の前が霞んできた。
顔を洗いに洗面室へ来たけど鏡に映った顔がひどすぎた。
(目の下のクマ、顔には疲労の色が濃く、メガネが少しずれている。)
「はあ……この10日くらい、まともに眠れてない気がする。徹夜……そして徹夜。一体いつになったら人間らしい生活を送れるのかな」
オフィスに戻り席へ着く。
「もう、無理だ……(スマホを無表情で見る)午前2時……まだ終わらない。なんなら企画書の提出は今日だ。目の前の書類は山積みのまま、今日までの企画書は手付かず」
目の前の仕事に眩暈がして、胃が痛み手で押さえる。
「胃が痛い。頭は痛いし、もう何も考えられない。この資料、誰か代わりに作ってくれないかな……」
(無意識のうちに、強い願いが口から漏れるように呟かれる)
「助けて……」
濁っていた貴子の瞳の奥に、突然、鮮烈な青白い光が宿る。その光が瞳孔から溢れ出すように広がり。
高周波の電子音、空間が歪むような感覚に眩暈がしたする。
しばらくしたら、貴子のデスク全体に散乱していた書類とPCモニターが突然に青と金色の光を放ち始め辺りには蝶が舞う。
「えっ。なに?」
貴子は目の前に起こっているのか、わからなかった。
書類が意志を持ったかのように、宙に浮き上がり、高速で分類・整理され、文字が自動で打ち込まれていく。タイプライターが超高速で動くようなエフェクトと音が鳴り響く。
キーボードが超高速で動く、電子的な加工音がオフィスに響く。
貴子は口を半開きにして呆然と見ている「な、なに……これ……?」
数秒後、デスクの上には、完璧に完成された企画書と整然と並べられた書類の山。まるで誰かが魔法を使ったかのようだ。
私は震える手で企画書を手に取り、内容を確認し完璧な仕上がりに驚愕した。しかし同時に疲労で思考が追いつかない、あまりものうまく出来上がってた資料に見とれる。終わっているのは、夢なのではないかと思いながら、一気に確認していく。
データ、仕訳けた資料、企画書まで仕上がっていた。
「……ありえない……とうとう私の脳もこの漆黒の企業のせいでおかしくなったのかも……」
何はともあれ、目の前の仕事は終わった。久しぶりの日の出前に仕事が片付いたのでオフィス内の給湯室へ貴子はコーヒーを入れようと貴子は向かった。
貴子がコーヒーを入れようとしていると、紙コップのディスペンサーは空だった。
(独り言)「はあ……もう補充する気力もないわ……((誰か、コップ、出してくれないかな))……」
するとカラン、と小さな音がした。貴子が呟いた直後、音のする方を見ると紙コップディスペンサーから、まるで意思があるかのように新しい紙コップがポトリと落ちてきた。
紙コップを拾い上げ、一瞬固まる)「……え、今……?」
(周りを見渡す、しかし誰もいない。再びディスペンサーを見るが、何の変化もない。)
「気のせいよね……やっぱり疲れてるのね」
コーヒーを入れた後、給湯室で一口飲んでデスクに戻る。
文具を片付けようと、デスクの引き出しを開けると、中から出てきた書類のコピーを頼まれていたことを忘れてしまい、コピーすることになった。
「この資料のコピーをすかっり忘れてた。さっさと終わらせんと」
コピーを始めると、コピー機がコピー中で紙詰まりを起こし、警告音が鳴っている。オフィスにエラー音が鳴り響く。
「もう!こんな時に限って!」
イライラしながら紙詰まりを直そうとするが、手が震えてうまくいかない。
「お願い、早く直って……早く休みたいのよ……!」とコピー機のモニターを見るとエラー表示が出てきていた。
その瞬間にガコンと大きな音、青白い光がコピー機から漏れ、光が収まった後コピー機は正常に動き出した。
まるで貴子が念じた途端、コピー機が一人でに動き出し詰まっていた紙が勢いよく排出されたかのようだった。コピー機の画面を見たらエラーが表示は解除されていた。
再び呆然とする「な、なんで……?」さっきまでは確かに紙詰まりを起こしていたのに、私はコピー機をまじまじと見るが、普通のコピー機にしか見えない。
「疲労のせい……?うん、きっと疲労のせいよ。もう何が起こっても驚かないわ……」
その日は、自分のデスクのひざ掛けをかぶり眠りについた。
数時間後、何事もなかったかのように始業時間が来る。
朝。貴子はもちろん定時で出勤、なんなら泊まりだ。
そして朝一で完璧な企画書を部長に提出しているところだ。
私の部長はこいつ、鬼瓦 厳(おにがわら げん)。内の部署の一番のストレスの元凶である。
こいつはパワハラの権化だ。理不尽な仕事の押しつけ、言い訳、こいつの指示に従わないと怒鳴り散らしお叱りタイムという名の生産性のない時間が数時間続く。
鬼瓦厳は企画書を見るや否や上機嫌になる。
企画書を見て満足げに頷く「おう、藤原! 今回の企画書は良い出来だ。徹夜で頑張った甲斐があったな!俺が新人の頃はな、徹夜して当たり前だったんだ。お前も身をすり減らして頑張れよ」
私は力なく作り笑顔で答える「はい、部長。頑張ります……」
作ったのは私のようで私じゃないけどな、とおもいながら部長に愛想笑いする。
こちとら過労死寸前だってのと思いつつデスクの戻る。
貴子はデスクに山積みの資料を片付けている。
その周囲には、キラキラと輝く無数の光る蝶のようなものが、ふわりと舞い上がっている。貴子や周囲の人には見えていない。
羽ばたくような、しかし神秘的な微かな音を立て蝶は、貴子の周りに飛び回る。
「なんだか、いつもより身体が軽い感じ……。こんな疲労の極致なのに……」
(資料の片付けを終えて、伸びをする。ふと、窓の外を見ると朝の景色が少しきれいに見えた。)
「……今日こそ、定時で帰るぞ……!」
オフィスビルが朝の日差しに照らされている。そのビルの上空を、貴子のデスクにいたのと同じ光る蝶が無数に舞い上がっていく。
謎の男があるビルの上から双眼鏡を覗く。
「幻蝶か……誰かが神通力を覚醒させたのか。」
神通力、それは太古の昔から日本の伝統的な特異な能力。それを発現するには、血筋や修行など様々だが、近代日本のほとんどは、強烈で重たい感情による覚醒だ。
にやりと笑う謎の男は、静かに朝日の光に溶けて消えていく。
そして貴子は今日も株式会社B&カンパニーで社畜する。しかし、それは波乱の非日常の始まりに過ぎなかった。
