お守りリボン

 時は流れいつの間にか高校三年の三月。ついに卒業だ。
 「緊張するね」
 「そだね」
 そして僕たちはいつからか学校中で話題の名カップルとなっていた。口外はしていないのだが恐らく学園祭のプロポーズで爆発的にに広まっていったんだと思う。
 「一緒の大学行けるかな」
 「大丈夫だよ、俺と一緒に勉強したもん」
 「ふふっ、でもまーくんがあんなに頭いいなんて知らなかった」
 「何それ、俺そんなに頭悪そうだったかな?」
 「そうじゃなくて、お義兄ちゃんが昔僕のことばかりで怒られてたって」
 「ふーん、俺今でもはるくんのことしか考えてないけどね」
 そう言ってまーくんがニヤリと笑う。
 「まあ僕もずっとまーくんのこと考えてたんだけどね」
 僕はまーくんのほうを見てニヤリと笑い返す。
 僕らが話しているとなにやら教室の外が騒がしい。気になって見てみると中等部や別クラスの人達に後輩生徒が押し寄せていた。
 「まひはるは卒業しないで!」
 「私達のまひはるがー!!」
 どうやら僕達のファンみたいだと梶くんが教えてくれた。いつの間にかファンクラブまで出来ているようだ。
 「普通に卒業はしたいんだけど………」
 「今すぐ卒業させてあげるよ」
 梶くんはその言葉にドン引きだったようだが僕にはさっぱりわからなかった。とりあえず「ありがとう」とだけ返しておいた。
 「あれ?てかまだしてなかったんだ」
 「うん、はるくんがしたいならしたけどそういうタイプじゃないでしょ」
 「?何の話してるの?」
 二人が話している内容がイマイチわからない僕はとりあえず聞いてみることにした。
 「そりゃあセ………」
 「遥輝は知らなくていい!!!」
 梶くんがまーくんと被せてまーくんが何を言ったのかはわからなかったがとりあえず知らなくてもいいならいいか。
 それにしても外の生徒達は増える一方だ。どうにか出来ないかと悩んでいると突然まーくんが僕を持ち上げ扉の前まで運んだ。
 何をするのかと思えばまーくんは僕の腕を掴み手の甲を見せつける。
 「俺らもう結婚してるから、卒業しないとダメなんだ。ごめんね」
 そう言ってまーくんは僕の額にキスをする。
 それに歓声を上げ倒れだす生徒まで現れる。
 「だ、大丈夫?」
 「はい!ありがとうございますありがとうございます!!」
 「ならよかった、じゃあ僕達そういうことだから卒業はするよ」
 僕がそう言い微笑むとなぜか倒れる生徒が増えてしまった。チャイムが鳴り田辺先生が現れたのでさっきまで教室の前に押し寄せていた生徒達は急いで教室へと戻っていった。
 そして本番、僕達はなぜか隣同士で手を繋ぎながら入場することになった。
 「なんでこんな………」
 「好きだからだよ」
 まーくんは繋いだまま僕の手を上げ手の甲にもキスをする。
 後ろで見ていた梶くんはしらーっとした顔でこちらを見つめる。もはやただのバカップルだろうけどカップルなのには変わりないし小中で今まで会えなかった分イチャイチャできて僕的には悪い気はしないけどやっぱりよくないのだろうか。
 「梶くんってこういうのやだったよね」
 「………いや、イチャイチャすんならご勝手に。その代わり今度俺もお前らの前で玲央とイチャイチャするわ」
 「おっけー、楽しみにしとく」
 梶くんとそう話しているとついに僕たちの番。そして拍手とファンの声援で迎えられる卒業式。
 観客席には優唯もいてこちらに大きく手を振る。僕はそれに手を振り返し席へと着く。
 その後も四組が入場し遂に校長先生がステージ上で話し始める。
 長い話に退屈になっていたまーくんをちょんとつつき声をかける。
 「この後校庭の桜の木の下来れる?」
 「行く」
 「じゃあ渡したいものあるから楽しみにしてて」
 「わかった」
 僕はそう約束すると、まーくんから貰った指輪と膨らんだポケットを見てまだかまだかと楽しみにしていた。
 そして校長先生達の長い話も終わりついに卒業生が呼び出される。
 一組、二組と呼ばれついに僕達の三組。
 梶くんが呼ばれた次が僕の番ステージに登る階段ですれ違った時に梶くんに小さく「がんばれよ」と声をかけられた。多分ポケットのことがバレてるんだろうな。
 「卒業、おめでとうございます」
 校長先生から渡された卒業証書を受け取り席へと戻る。
 僕が席へ戻る時梶くんの時と違って後ろから悲しみの声が多く出てめちゃくちゃ歩きにくかった。ここまでされると流石に恥ずかしい。
 「まーくんも気をつけて」
 「ん?あーあれ?大丈夫だよ、はるくんのほうがファン多いし」
 「え、そうなの?」
 てっきりイケメンのほうが人気なのかと思っていたが実はそうでもないらしい。僕が女装したからそっち方面で人気がでかくなったらしい。
 「僕の女装ってそんなに需要あるの?」
 「いや、はるくんってだけで需要大あり。女装とか関係なしに」
 まーくんのその真剣な眼差しに思わず目線をそらす。
 そして話している間にもまーくんが呼ばれる番は来てしまい席を離れてしまう。
 「プロポーズ、がんばれよ」
 「………うん」
 「俺はその辺干渉しないしさせないから安心して」
 「…………させないならしてはいない?」
 「あー、まあそうなのかも?」
 でも梶くんなら同じだから安心できる。邪魔されたら台無しだしそういうのもないようにしてくれるんだろう。
 「ただいま〜もうすぐ終わりっぽいよ」
 「マジ?早く終わってくれないかな」
 今すぐ僕からも指輪を渡したくてソワソワしていると突然まーくんから声をかけられた。
 「今日か明日俺ん家泊まって、どっちがいい?」
 「えっ、じゃあ明日?明日休みだし一日中一緒にいれるじゃん」
 「おけ〜じゃあ明日ね」
 「どうせなら明日荷造りしちゃう?」
 僕は同棲するのだからどうせならと提案するがまーくんは首を横に振った。
 「それは明日じゃヤダ、せっかくのお泊まりなんだからゆっくりしよ」
 「………わかった」
 「てかはるくんのほうはいいの?同棲」
 「え?なんで?」
 「いやだって優唯くんいるじゃん」
 そうだ、すっかり忘れてた。優唯がいたこと………
 でも最近僕が居なくても平気ってこと多いから気にしてなかったな。
 「まあこの後はるくんとの用事終わったら挨拶しに行こうかな」
 「んー、優唯まだまーくんのこと警戒してるんじゃない?」
 「そんなことないっしょ、はるくんが俺のこと言えばわかってくれるんじゃない?」
 「いや前言ったんだけど………」
 僕がそう言いかけるとまーくんは頬杖をつき僕の頭を撫でる。
 「そうじゃなくて、結婚すること。言ってないでしょ?」
 「それは言ってもわかんないと思うから」
 確かに僕が前伝えたのは夏祭りの後だ。学園祭の時は伝えれなかったな。
 「いいチャンスだと思うけど?」
 「………じゃあお願いします」
 「おっけー、俺も伝える」
 「俺最後まで空気じゃん、お幸せに〜」
 梶くんが不満そうにこちらを睨んでいると証書が全て配り終えたようで最後に校歌斉唱。
 僕らは早く終わらせたい気持ちが強かったのでそこは特に覚えてない、歌いはしたけどそれくらいしかないし。

 そして卒業式も終わり親に報告しに行く子や写真撮影する子、SNSに投稿する子など色んな同級生がいたが僕らは二人桜の木の下へ来ていた。
 「じゃあさっさと言っちゃうね」
 「うん、どうぞ」
 僕はポケットから用意していた指輪を出した。
 「ぼ、僕と………結婚してください」
 「はい、一生一緒にいてね。もう離さない」
 まーくんは僕が差し出した青いラインの入った指輪を薬指につけ僕を抱きしめる。
 「俺からも改めて言わせて、結婚しよ」
 僕は微笑みまーくんを見上げ背伸びをし、キスをした。
 「大好きだよまーくん」
 「………はるくん積極的になったね、前までは大人しめだったのに」
 「そりゃあ僕も大人になったもん」
 「そっかぁ」
 まーくんはなんだか寂しそうだ。それも何年間も会えてなかったんだからたった一年ちょっとじゃ慣れないよな。
 「大人の僕じゃ嫌?」
 「そんなことないよ、大人になったから一緒に住めるじゃん?逆にいいよね」
 「それはそうだけど」
 僕がそう答えると突然口に何かが触れる感触がする。
 「なっ…………!?」
 「不意打ちに弱いね、大人にはまだ遠いよ」
 「そんなこと言うまーくんだって子供っぽいじゃん」
 「あはは、そうだよ?俺達まだ子供なんだ。高校卒業したからって大人になるんじゃないよ」
 「………明日楽しみにしてるね」
 そして僕はまーくんの手を掴む。
 「帰ろっか」
 そうして僕達は十年近くの時を経てついに結ばれた。桜の木も僕達を祝福するように花弁(はなびら)が舞う。
 この手は絶対に離さない。これからはずっと一緒。
 お守りの青いリボンのついた猫のぬいぐるみも少しボロくなっているけれど僕達の縁は永遠に切れない。
 僕達は二人でそう誓ったのだった。


 数年後
 「今日何時に帰れそう?」
 「仕事終わったらすぐ帰るよ、だいたい六時くらいには終わるから待ってて」
 「わかった。今日は記念日だからいつもより豪華にするね」
 「そうだ、今日記念日だし先に渡しとくね」
 そしてまーくんは部屋から小さな箱を取り出した。箱の中には懐かしい青いリボンが入っていた。
 「これ、あげる。俺らのお守り、どれだけ離れていても俺らを結んでくれるお守りリボン」
 「ありがとう、一生大事にする」
 「好きに使っていいよ」
 「勿体なくて使えないよ、それに縁を切っちゃうみたいじゃん」
 「えー?昔あげたのは使ったくせに〜」
 「それはそれ!てか早く行かないと遅刻するよ」
 「やっべ、今日絶対早く帰るからいい子で待ってて。不倫しちゃだめだぞ」
 「しないわ!」
 大人になった僕は笑顔でまーくんを送る。
 そして貰ったリボンを昔貰ったリボンと一緒に棚の中へと大切にしまった。
 そこへある一通の電話がかかってきた。
 「もしもし?兄ちゃん?」
 「優唯じゃん、どうしたの?」
 「好きだよ♡」
 「俺も好きだよ、学校でしょ?早く行ってきな」
 「はーい」
 そう言って電話は切れる。いつの間にか優唯はまーくんそっくりに育っていた。小学生だからまだ身長は僕より低いけどこのまま行くと中学を出る頃には追い抜かれていそう。
 僕の周りはなぜか僕より大きい人が多い。狸塚さんだって身長は僕と同じだったし僕が低いのかもしれないけど僕はそれに満足している。だって見上げればまーくん達の顔がよく見えるんだもの。
 僕は前日から用意していた食材を取り出し気合を入れて調理に進むのであった。