・【02 いつものつもり】


 教室に入るなり、凛々子が嬉しそうに近寄ってきて、
「梨絵! 今日めっちゃ最高のパン買えたから、一緒にお昼に食べよう!」
 そう言いながら袋を見せてきて、私は「あっ!」と声を出してから、
「それ! ブルックリンの惣菜パンじゃん! 七時の開店からお客さんいっぱいの!」
 凛々子はちょっとブリっ子みたいに拳を作りながら、
「今日たまたま人少ないから買えちゃった!」
「じゃあお代あとで言って!」
「いいよぉ、今日はおごり! 理由なき、おごり!」
「そんな理由なき犯行みたいに言われても!」
「ツッコミお駄賃だよっ」
 そうウィンクしてきた凛々子。
 いや、
「私のツッコミに値段をつけられているみたいで若干嫌だよ!」
 とツッコむと、凛々子が慌てて、
「嘘うそっ、長岡空襲の良い締めを教えてくれたお礼っ」
「それこそマジでどうでもいいよ、こういう時はちゃんとお金しないと」
 そんな会話から昨日見た動画の話をして。
 凛々子はしっかりパンの袋を閉じたつもりだったみたいだけども、三限目に現国の岩清水先生が「めっちゃ良い香りするなぁ」と言った時はクラス中が吹き出した。
 若干、凛々子は恥ずかしそうに俯いていた。凛々子の席は横直線上なので表情がよく分かる。
 四限目の体育も終わり、お昼休みになり、一緒にブルックリンの惣菜パンを食べた。
 凛々子は満面の笑みで、
「小麦工房過ぎぃ」
「ブルックリンの正式な店名いいから、というか凛々子、一部を抜き取るボケ好きだよね」
「ちょっとぉ、そんなハズイ分析しないでよぉ、セカオジじゃん」
「セカオジの分析はハズくないよっ」
「そう言えばさ、ひいおばあちゃんがさ、何かグミの袋見せて、これと同じヤツ買ってきてほしいと言ったんだけどさ、めっちゃグミの袋がボロボロなの! ヤバくないっ?」
「急に何の話っ」
 と吹き出しながらツッコんだ私。凛々子は続ける。
「結構、新発売気味のグミなのにさ、もうめっちゃボロボロになっていて、何それって思いながら買ってあげたよ」
「良い子じゃん」
「でもそれ食べて懐かしいとか言ってさ、絶対観点ゼリーと勘違いしてるよね!」
「だからって寒天ゼリーで決め打ちはおかしいけども」
「いやいや! グミの色も寒天ゼリーと似ているヤツだし!」
 と何故か得意げに言う凛々子。
私は小首を傾げながら、
「でも袋持っていたんでしょ? パッケージというか、だからそれはそれでしょ」
「そう! それはそれなんだけども、めっちゃボロボロのヤツ!」
「バッグに入れていたら擦れたみたいな?」
「いやもう古いの! 古い感じなの! 茶色いシミというか!」
「それ何のグミ?」
「あたしが一番好きなアレ!」
 私はう~んと唸ってから、
「ああいつも凛々子が持ってるヤツ、一昨日も食べてたね」
「そう! それ!」
「何か、地面にでも落としたんじゃない? 茶色というと泥というか、泥まみれの水たまりに落として踏んだとか」
「あぁ、それかも! もうひいおばあちゃんも歳だからなぁ……」
 と何だかしんみりした空気になったので、私は即座に前見て面白かった動画の話をし始めた。
 そんな会話をして本当にいつも通り、本当にいつも通りだから今度こそ大丈夫なはず……だと思ったんだけどなぁ。
 授業も終わり、放課後適当に喋って、家路に着いて、いつものルーティンをこなして寝ると、またあの明晰夢になっていた。
 でも一つ違うところがあった。
 それは大人になった私の姿ではなくて、いつもの私の姿で、しかもパジャマのまま。足元を見ると、ゴミ捨て場で拾ったみたいなボロボロの靴を履いていた。RPGの初期装備みたいなヤツ。
 さらにって、じゃあ二つか、もう一つ違うところはくすんだ長岡市ではなくて、もっとくすんでいるというか、木造の建物ばかりの、見慣れない長岡市だった……というか長岡市で合ってるよね? いや違う? 分からん。よくよく見れば全然違う。でも何かこの地形はどこかで見たことあるんだよなぁ、と思ったその時だった。
 けたたましい轟音が市街に響いた。
 これはサイレンというヤツ? 何かたまに聞くヤツ、の、めっちゃ音が大きいバージョン。
 正直鼓膜が破れそうなほどの大音量にその場にうずくまってしまうと、誰かが私に話し掛けてきた。
 顔をあげると、私と同じくらいの年齢の子なんだろうけども、化粧とかも一切していないどころか、何か生傷のあるような面持ちで、どこで何している人? ネグレクトを受けているの? って感じ。身長は私よりも少しだけ低いくらいなんだけど、激痩せというか拒食症といった見た目だ。
 その子が私に向かって、
「そんな白い服を着ていたら贅沢だとみなされるよ、早く防空壕へ行ってついでにそこで土塗らないとダメだよ」
 防空壕……って、確か戦争の時に空爆から耐えるために、入る防御の穴みたいなヤツ?
 いや、
「防空壕ってちょっと、今、いつ?」
「もう、錯乱しちゃダメだよ、おかしい子は処罰されちゃうから」
「いやだから今、令和何年?」
「れいわって何?」
 もっと未来? いや未来の人なら令和という元号を歴史として知っているはず。
 その子というか、その女子はこう言った。
「今は昭和二十年七月十七日だよ」
 えっ……と絶句してしまった。
 だってその日付は長岡が空襲に遭う十三日前だったから。
「とにかく早く防空壕へ、空襲警報が鳴っているから」
 そう言って私の手を引っ張って、私はその女子に連れられるまま走っていた。
 防空壕に着くと既に大勢の老人や婦女子がいて、私は中に押し込まれるように入ると、そこにいた老人から、
「そんな白い服は良くない。土や植物の汁で汚さなければ、空襲の標的になる」
 と言いながらノータイムで土を私のパジャマにつけてきたので、つい「キャッ!」と声を出してしまうと、別の老人が「うるせぇ!」と癇癪のような声を張り上げた。
 何この空間、一体どうなっているのと考えることしかできず、されるがまま私のパジャマはいつの間にか茶色に染められていた。
 サイレンも止み、私はそこから出てきたわけだけども、人間の熱気で蒸されるような感じだったし、そもそもカンカン照りで元々の気温も高いようだった。
 いつも使っている日傘があれば、と思いつつ、とにかくこの場を去ろうとすると、私をこの場所に連れてきた女子が、
「貴方も高等女学校の子でしょ? 学校へ行って、縫製の仕事をしなきゃダメだよ」
 高等女学校、多分高校のことだと思うんだけども、そこから縫製の仕事という日本語が一致しなかった。
 いや高校なんだろうから勉強するはずでしょ、と思いつつも、この女子はグイグイくるような子で、何だか逃げ切れそうにない気がしたので、そのままその高等女学校に行くことになってしまった。
 でもどうせ夢だし、いつか醒めるだろとどこか高をくくっていた。
 現にまるで夢のように、途中途中で途切れ途切れというか、道中の歩行は映画のようにカットされていって気付いたら校舎の中にいた。
 高等女学校は木造校舎で本当に全部木造なんだ、と変な感心と共に教室の中に入った時、唖然としてしまった。
 いや、違和感のある音がしていたので、普通の教室ではないんだろうなという気持ちはあったけども、まさか机もイスも無くて、ただただ縫製をするような機械があるだけなんて。
「今日は来てない子もいるから、その子のところでちゃんとやらないと」
 いやでも使い方が分からない。というか、
「勉強するところじゃないの?」
「あれ貴方、本当どこか変ね、勉強なんてもうとっくの前にしなくなったじゃない。もしかすると機械の使い方分からない? じゃあわたしのほうをちゃんと見ていて。教えながらやるから」
 そう面倒見が良いお姉さんのような表情で、私に機械の使い方を教えていった。
 それ以外にもこれは軍需縫製工場で、全ては軍のために使われるとか。
 私はそんな物覚えが悪いほうではないので、すぐに使い方を覚えて、一応使うことができるようになった、ところで、また映画のようなカットが入り、じゃあ時間は、と思って時計を見ようと思ったんだけども、どこにも時計は無かった。
 ちょうどそのタイミングで先生だと思われる人から「辞め!」と言われて、帰れるんだと思っていると、その女子が、
「次は校庭の草むしりね」
 と言った。
 こんな時でも草むしりはするんだ、と思っていると、校庭へ着いた時に愕然としてしまった。
 何故なら校庭が草で覆われ過ぎていたからだ。いやこれのどこを草むしりするって全部? と思っていると、その女子がこう言った。
「これ分かる?」
「全部雑草?」
 するとその女子は大笑いしてから、
「こんな茎の太い雑草なんてなかなか無いわよ! これはカボチャよ!」
 と言った時に、あぁ、これ野菜のカボチャかと何か分かった。そう言えば、畑で見たことがあるかも。
 というか、
「校庭が何で全部カボチャで覆われているの?」
「そりゃ食料確保のためよ! 今ある空き地は全てカボチャ畑になってるわよ!」
 空き地というか校庭は空き地じゃないでしょ、なんて言っていい空気ではなかった。厳密には言っても良かったんだろうけども、どうせ笑われることがオチなので言うことは辞めた。
「じゃあ草むしりしないとねぇ!」
 と改めて腕を捲った女子、というか、
「貴方の名前は何ですか、私は梨絵です」
「リエ! 珍しい名前だね! わたしはヨネコ! 確かに自己紹介まだだったね! よろしくね! 一緒に生きよう!」
 そう言って私と握手したヨネコの手は硬かった。皮が分厚いというか男性のようにゴツゴツしていて、それだけで環境が過酷ということが分かった。
 私とヨネコや周りの女子たちも草むしりをしていると、また映画の編集のようにいつの間にか時間が経過しているような気がした。
 気付いたら私は額から汗が吹き出していて、目も開けられないくらいだった。
 ヨネコも半分目を瞑りながら草むしりをしていて、これが普通なんだと思ってしまった。そもそも帽子とかも無いんだ。
 そうだ、
「防災頭巾をかぶって作業とかできないものなのかな」
「何で? サイレンは鳴っていないよ?」
「いや日差しから頭を守るために」
「そんなのしていたら頭が蒸しちゃうよ!」
 どうやらちょっと常識が違うらしい。
 そういうこの時代とはズレている行為は諦めるしかないみたいだ。グラウンドをカボチャ畑にするほうが余程ズレているけども。
 ヨネコが立って、腰をおばあのように叩きながら、
「最後は竹槍訓練だね」
 と言うと、何か時間がトリップしたような感じがして、やっと目が覚めたのかなと思ったら、気付いたら私は体育館で竹槍を握って、突く動作を繰り返していた。
 何これ、としか思うことができなかった。
 さすがに第二次世界大戦で竹槍を使う機会が無いことは知っているから。
 一体これは何のための訓練なんだ? それならまだ防空壕を整備したほうがいいような気がする。
 何を想定しての竹槍なんだ? というかやたら重いし、竹も磨いている竹じゃないからざらざらして、肌に突き刺さるような痛みがする。
 ふと自分の手のあたりを見ると、腫れているように赤くなっていて、これはさすがにヤバイのでは。
 先生の「終わり!」という言葉と共に竹槍を周りがおろしていくので、私もおろした時に絶句した。
 なんと手の皮がズルズルに剥けていて、血が滲んでいたからだ。
 夢なのにこんな痛いなんて、と思ったその時だった。
 私は家のベッドの上で仰向けになっていた。
 急いでスマホを確認すると、ちゃんと明日になってるっぽかった。令和だ、令和。
 なんて最悪の夢を見たんだと思いながら、洗面台へ顔を洗いに行くと、鏡に映った自分のパジャマを見た時に唖然としてしまった。
 何故なら薄っすらだけども、現実のパジャマも土をつけたかのように焦げ茶色になっていたからだ。
 私は自分のショートカットを極限まで揺らしながら驚いた。
 いや夢の中ではもっと汚されていたけども、これでも十分、といった感じだ。
 何か、私自身から茶色い汗が出るようになった? そんなカバのピンクの汗みたいな。いやそんなはずはと思いながら、蛇口の水を手ですくったら、
「いっつぅ!」
 と声を出してしまった。えっ、と思いながら、手を見ると、なんとところどころ手の皮が剥けていたのだ!
 何で……何で、あの夢と現実が少しリンクしているんだ……私は膝が震えてきて、顔も洗わないまま、自分のベッドにもう一回ダイブした。
 こんなこと、なんで、分からないよ、意味が分からない、あの夢は現実? のはず、なくない? このベッドで寝るとそうなるの? だからってベッド以外で寝るところないし、もう徹夜するしかない? マジでヤバイ、こんなこと、誰に相談したらいい? 凛々子に言っていいの? 何か電波な子とか思われない? 急なキャラ変とか思われない? 嫌だ、凛々子に嫌われたくないよ……誰にも言えないよ、こんなこと、ヤバイ、本当に、休む? いやいや何か寝たらまた”行く”んじゃない? じゃあ高校に行って凛々子と会話しているほうがいいかな? そうだよね、絶対まだそっちのほうがマシだよね。
 なんとか気力を起こして、私は登校の準備をして、家から出た。
 私は家から徒歩圏内の長岡学園高校の校門をくぐった。
 長岡学園高校は相変わらずの喧騒で、私のことなんて露知らず……なんて当たり前か、教室に行くといつも通り凛々子がいて、面白かった動画の話をしてくれる。
 でも何か相槌も元気が出ないでいると、凛々子が、
「どうしたん? 元気無い感じ? スカイブルーって感じ?」
 いつもだったら『爽やか過ぎでしょ、ただただブルーになってんの』くらい言えると思うんだけども、何かもう喋る気力が無い。
 まあここまで脳内に言葉を浮かべた自分を自分で褒めたいぐらい。
 つい黙ってしまうと、凛々子が私の額に手を当ててきて、
「熱は無いみたい、でも何かざらざらかもっ、いやディスとかじゃなくてちゃんと日焼け止めしている?」
 そうだ、昨日のカボチャ畑の草むしりでそうなってしまったんだ。
 私は首をブンブン振って凛々子の手を振り払いながら、
「何でもないよっ、大丈夫っ。でもちょっと本調子ではないかも。一人で休むねっ」
 と言って机に突っ伏すと、凛々子が背中を優しくさすりながら、
「あんま机に突っ伏すの良い感じじゃないよ」
「ゴメン、今はそんな世間体どうでもいい」
「そう……」
 と寂しそうな凛々子の声が聞こえたのを最後に私の心は闇色に染まった。
 何でこんなことになってしまうんだろうか、私、本当にどうしちゃったんだろう。もしかしたらこのまま私は夢の中の戦争で命を落として、本当に死んじゃうんじゃないのかな? 嫌だ、死にたくない、こんな死にたくないなんて思うとは思わなかった。私は幼稚園の頃、イジメを受けていた時期があって、その時は毎日死にたいと思っていた。結局自殺の自の字もできなかったけども。そうだ、その時も死にたいと思いながら死にたくなかったんだ、あぁ、あの頃を思い出す。もう今度こそダメかも。何か立ち直れないかもしれない。どうにかして死なない方法。そうだ、もう少しだけ長岡空襲について調べようか。私の唯一のアドバンテージ、それは長岡空襲が起きることを知っているということだ。そこを生かす手は無い。
 私は片耳を机に付けつつも、スマホで検索をし始めた。
 やっぱりAIは心許ない。グーグル検索で長岡市のホームページを見るに限る。
 というか長岡市のホームページ、ブックマークしておこう。
 ホームページのトップには天地人花火という花火の画像が一面に出ている。花火って火薬でしょ? 私はその火薬で殺されそうな瀬戸際にいるのに呑気なもんだ。
 またページ検索がいいかも、キーワードで検索というか、何かバカみたいだけども『長岡空襲 助かる』で検索してみて、一番上のページをクリックする。
 PDFで十一ページあるみたいだ。即座にページ検索をして『助かる』と入力。
 会話形式になっていたので、前後の会話を確認する。
『『『(記者)組織変更について、工事監理担当課長を配置する背景や効果を教えてください。
(市長)建設業界の皆さんから、入札から工事までのさまざまな手続きが非常に手間暇がかかる、オンライン、メールで短時間で、簡潔にできないかなどの要望があります。法令上の縛りがありますが、今あるさまざまな新しいシステムを使い、そういった手続きを簡略化できた場合、技術者や総務部門の人はとても助かるというような話を多く聞いております。できることは可能な限り早く実施していきたい、具体的な、実務的な改善をしっかり行いたいといった趣旨になります。』』』
『『『長岡市ホームページ(長岡市長記者会見要旨”20250217-01.pdf”)より引用《2025年7月9日閲覧》』』』
 ダメだ、全然関係無い話だった。
 というか何だ、ふと長岡市のトップページに戻ってみる。ついでに昨日心許ないとはいえ一応AIに聞いた文章を読み返す。
 あっ、長岡まつり大花火大会って、長岡空襲で亡くなった人々への慰霊と復興への願いを込めて、空襲の翌年から「長岡復興祭」として始まったものなんだ!
 何かそんな話聞いたことあったかも! じゃあさっき呑気なもんとか考えたの、撤回しないとなぁ……そうだ、さっきのPDFで『長岡空襲』とも検索しないと。何かヒントがあるかも。三か所ある。
 全部『今年は終戦から八十年』という記述ばかりだ。やっぱり『助かる』と併用されていないと意味が無い、と思ったところだった。
「梨絵! ちょっとは元気になったっ?」
 凛々子だった。私はつい反射的に手のひらの剥けた皮を隠しながら、
「ちょっと調べもの」
「あっ、長岡空襲について調べてる! めっちゃ熱心じゃん! アタシも一緒にやるよぉ! 課題じゃん!」
 と言いながらまた私の前の席に座って、こっちを向き、スマホを取り出した。
 できるだけ凛々子に手は見られたくないので、凛々子に指示を出すように、
「長岡空襲ってどういう人が助かったのかな?」
 と聞くと、
「なるほど、今後のためにね!」
 と冗談っぽく凛々子は言ったんだけども、私にとっては全然冗談ではなくて、ついムスッとした顔をしてしまったんだと思う。
 慌てて凛々子が、
「そうだよね、世界には本当に今も戦争状態の国あるもんね、こういう不謹慎なボケはマジでダメだよね」
 と本気で反省しているような顔をしながら、グーグル検索し始めた。
 凛々子がスマホを私にも見えるように構えながら、
「AIによる概要だから微妙かもだけども」
『『『長岡空襲で助かった人たちは、避難場所や状況によって様々な体験をしています。例えば、平潟神社に逃げ込んだ人、柿川に入って助かった人、焼夷弾を投げ捨てて助かった人など、個々の状況で助かるための行動が異なっています。長岡空襲は、昭和20年8月1日夜から2日未明にかけて行われ、市街地の約8割が焼失し、1480人余りの犠牲者を出した悲惨な空襲でした。当時の長岡市の人口は74,508人でした。
 助かった人々
 平潟神社に避難した人々:
 新潟日報によると、当時7歳の星野栄子さんは、平潟神社に逃げ込み、井戸に先に入っていた人がいたことで助かったと語っています。
 柿川に避難した人々:
 新潟日報によると、白石美千雄さんは、霞橋(柿川に架かる橋)まで行き、柿川に入って助かったと話しています。
 焼夷弾を投げ捨てて助かった人々:
 な!ナガオカによると、弥さんの父、長治さんは、鍛冶職人であり、警防団にも入っていたため、胆力があり、焼夷弾を投げ捨てて助かったとな!ナガオカは伝えています。
 その他:
 長岡市によると、空襲警報が鳴る中、家族を先に避難させ、家財道具を避難させようとしていた長治さんは、柱時計の音を聞いて、避難場所へ向かったとな!ナガオカは伝えています。』』』
『『『Googleの回答より引用』』』
 凛々子は軽く読み上げ終えてから、
「何か後半、文章がキモくなってきているからマジで変だけども、基本的には水場に潜り込むのが正解らしいね」
 というと最初から柿川の近くにいれば良いっぽい? でも確か、空襲の時刻は夜だったはず。明かりの無い夜にどうやって柿川に向かえば(または居れば)いいのだろうか。
「まあこんな感じごんすなぁ」
 と軽くふざけるように言った凛々子に何も言えなくてマジでゴメンなさい。
 凛々子は何事も無かったように、
「というわけで、こんな感じかな、あとどうやって検索する?」
 と言ったところでチャイムが鳴ったので、凛々子とは軽くバイバイと手を振ってからそれぞれ席に着いた。
 今日は移動教室が多く、選択式の体育もあったので、あんまり凛々子と会話できないまま昼休みになった。
 そこから徐々に私の内面的にも、あんなん何かの間違いじゃん、普通に高校生活してるじゃんと思うようになり、元気も回復していったので、昼休みは凛々子と普通に会話ができるようになった。
 凛々子も朝の私のことをたいしてツッコまず、いつも通り接してくれて本当に有難かった。
 放課後も適当に教室に残って喋って、校門で別れてバイバイして、私は家路に着いた。
 で、いつも通りのルーティンをこなして私は一大決心をすることにした。
 それは寝ないという選択だ。
 寝なきゃ大丈夫なはず、とりあえず一回徹夜して流れを変えたい、そんな気持ちだ。
 私はベッドの上にも座らずに、机の前でイヤホンで曲を聴きながら勉強をすることにした。
 絶対逃げ切る、そんな気持ちを持っていたはずなのに、急に、まるで気絶するように脳内が真っ白になっていき、気付いたらまたあの場所へ飛んでいた。