夜明け前、あなたに届けたい言葉



生まれて初めて他人の見えない傷に触れたんだ。

それに触れた瞬間、その子は言ったよ。
「ずっとね、ずっとここで息してるの、消えてくれないんだよね」って。

奥深く眠る心でその傷を生き物のように飼っていた。


「その傷の消し方があるとしたら知りたい?」

「あるなら知りたいよ。だけどないでしょう」

「そうだね、ないかもしれない」

「……あなたは違うの?消してくれるためにここにいるんじゃないの?」


――きっと、そうかもね。


「傷だけじゃないよ、きみの心も奪ってしまう」

「なにそれ」

「まあ、僕じゃなくてもできることだ。
好きなことでも見つけてごらん、きっとその傷を溶かしてくれるよ」

「それで消えてくれるの?」

「簡単なことじゃないよ。時間はたくさんかかるし、その傷が消えたとしても
新たな傷ができる可能性だってなくはない。だけどそれが生きるってことなんだから」

「そうだね」


――じゃあね。またどこかでまた会える日がくるかもしれない。