ラストシーンは君の笑顔で



「あ、澄!途中まで一緒に帰ろ〜。まだ家って昔のままだよね?」


朝からずっとクラスメイトに囲まれていた橘彩音から逃げるように私は毎時間のように教室を出ていて、今も放課後になった途端急いで帰ろうとするがついに呼び止められてしまった。

さすがに名前を呼ばれたのにクラスメイトの前で橘彩音を無視して帰ることなんてできず、背を向けたまま立ち止まる。

ど、どうしよう。絶対に一緒になんて帰りたくない。


「ねえずっと気になってたんだけど、彩音ちゃんと芹沢さんって何繋がりなの?」


ふと、クラスメイトの女子が不思議そうにそう尋ねてきた。

約三ヶ月同じ教室で過ごしてきた私は“さん”つけなのに、まだ知り合って一日も経っていない橘彩音のことは名前で“ちゃん”つけなんて、やっぱり橘彩音の初対面の人でも仲良くなるのが早いのは昔と変わっていない。


「小学校が一緒だったんだ。澄とは一年生の頃から五年生になるまでずっとクラスが一緒で、私が五年生の途中で引っ越しちゃってそれっきりだったからまさか高校でまた再会できるなんて思わなかったよ」


橘彩音を囲んでいたクラスメイトたちが、へぇと納得したように頷いていた。

たまたまクラスがずっと一緒だっただけで、別に仲のいい友達だったわけではない。

橘彩音が普段一緒に行動していた友達はクラスの中でも目立つような子たちばかりで常に人に囲まれたいたし、私のことなんてきっと覚えていないと思ったのに。

家が近かったからたまたま一緒に帰ることはあったけど、本当にそれだけ。