チャイムが鳴り、この間35歳の誕生日を迎えたばかりの担任の塚田(つかだ)先生が中に入ってきた。

塚田先生は柔道部の顧問で体格もがっしりとしていて一見怖がられがちだが、実は愛犬を溺愛しているというギャップがある。

いつも通り点呼から始まった朝のホームルームにぼんやりとしながら参加していると、ごほんと塚田先生がわざとらしく咳払いをしながら廊下の外を何やら気にしていた。


「えー今日は転校生を紹介する。入ってきてくれ」

「え、転校生！？」


塚田先生の一言で、一気にクラスメイトたちがざわめき出した。


「初めまして！橘彩音(たちばなあやね)です！映画を観ることが大好きです。よろしくお願いします！」


太陽のような眩しい笑顔に、どくんと心臓が強く脈打った。

息も瞬きもすることも忘れ、ただひたすらに笑顔で立っている彼女を凝視する。

なん、で…。なんであの子がここにいるの…？


「ねえ、あの顔、人気女優、橘彩葉(いろは)そっくりじゃない…？」

「あ、正解ー！私、橘彩葉の娘です」


クラスメイトに笑顔で答えた橘彩音に、ざわっと教室内が一層騒がしくなる。