ラストシーンは君の笑顔で

「…ああ」


そういえばそんなことを言ったなと思い出す。

何にしても、もう一度昨日の話をしてきてくれたのはこっちにとっても都合がいい。


「私、中学ではなんにも部活に入ってなかったの。本当は映画部作りたかったんだけど、一緒に映画を作る仲間たちと出会えなくて」


たくさん友達がいるんだから、橘彩音が一声かけるだけで映画部なんて簡単に作れそうなのに、と少し不思議に思う。


「だからね高校では絶対作りたいと思ってたの。青春だったなって懐かしく思い出せるような、そんな一瞬を積み重ねた映画を仲間たちと作りたいの。その一人が澄であればいいなと思ったんだよ。澄は人の心を動かす才能があるから」


どうしても映画を作りたくてそのためには脚本家が必要だから。

たまたま再会した私が小説を書いていたから。

だから、橘彩音は私を利用するために才能があるなんて私をその気にさせる嘘をついてまで仲間にしたがっているのだ。

全部わかってる。だから…。


「…いい、よ。手伝う」

「…え?本当!?いいの!?」


本当に嬉しそうにぱっと笑顔になった橘彩音に、もう一度小さく頷く。