「澄!待って…!」


廊下の真ん中で後ろから追いかけてきた橘彩音に呆気なく腕を掴まれ、周りにいた生徒が何事かとこちらを見ていた。


「ごめん、澄って人前とか苦手だったのに、私無神経だったよね。小学生の頃に夏休みの宿題で澄が書いた小説、最優秀賞取ってたでしょ?それからノートとかでも作ってたよね?」


そういえば休み時間にノートで自作小説を書き綴っていた時に、たまたま橘彩音に見られたことがあったのを思い出す。

学校で話しかけられたことがあるうちの一回があの時だった。

だけどあの時は橘彩音に自分の作った小説を見せることが恥ずかしくて、誤魔化したのに。

覚えていたんだ…。


「…あんなの、趣味で書いてただけ」

「てことはやっぱり今も書いてるの!?」


なぜか目を輝かせながら身を乗り出してきた橘彩音に反射的にのけぞる。


「な、なん、で…」

「あのね、夏休み明けに文化祭があるでしょ?そこで映画を作って上映したいって考えてるの」

「…は?映画…?」


突然何を言い出すのかと怪訝に思いながら橘彩音を見上げる。