翌日 学校
ヒロ:「ど、どうした! 小林!」
顔中バンソーコーを張っている小林を見て驚くヒロ
小林:「ああ、昨日学校帰りに篠原に会って…あいつ小学校卒業してすぐ引っ越してったから
清々してたのに、親戚の法事とかで帰って来てて」
ヒロ:「オレも昨日ばったり会った」
小林:「あいつ…あけみちゃん女の子の服着ないのってまたオレの名前をからかってきて…
聞けば成瀬にも会ってちょっかいかけたって言うし、小学校の頃と違ってオレの方が体格よくなってたから、
今までの分も締めてやったんだ」
ヒロ:小林…
ヒロは痛々しい顔で二カっと笑う小林に胸が熱くなる
ヒロ:「小林…ありがとな」
小林:「へへっ…あいつはこの倍は痛めつけてやったかんな」
ヒロ:ホントこいつは…
ヒロ:「オレ! 小林に聞いてほしいことがある」
そう言ってヒロは小林を廊下に連れ出した
ヒロ:「ずっと言えなかったんだけど…実はオレ、キラキラ王子の高原駿と付き合ってるんだ」
小林:「は?!! え? だって王子は成瀬のねーちゃんの彼氏だろ?」
ヒロ:「オレが自分に自信がないっつったら、ねーちゃんが偽彼女役やってくれるって言って…」
小林:「それじゃーホントにあの王子と?」
ヒロ:「ああ、駿はオレの彼氏だ!」
小林はヒロの肩に両手を乗せた
小林:「はあ~ 納得したわ。ねーちゃんの彼氏なのにめっちゃ仲いいなと思ってた」
小林は事実を噛みしめながら
小林:「うんうん…成瀬よかった…よかったわ。おまえ今いい顔してるもん」
ヒロ:「小林、ありがと」
ヒロは嬉しそうに笑った
その頃
駿:「陸、昨日は驚かせて悪かった」
陸:「ホントな、めちゃくちゃ驚いた」
陸:まさかヒロくんと付き合ってたなんて…
駿:「ヒロとちょっとこじれてて…でも無事仲直り? できたから」
駿は幸せそうに微笑む
陸:駿…
オレが駿を好きだなんて思いもしないんだろうな
陸:「そうか、よかったな」
駿:「ああ、それでオレたちの関係を説明するとーーーーー……」
陸:確かに違和感はあった
ヒロくんと仲が良過ぎだと思ってはいた
昨日だって、ヒロくんに必死で…見たことない駿だった
今だってこんなに幸せそうに…
陸:「は~~」
陸は大きなため息をついた
駿:「陸?」
陸:「完敗だ」
駿:「? 何が?」
陸:「なんでもない」
駿:??
訳が分からず陸に聞き続ける駿だった
昼休み
陽一:「オレと颯大、付き合ってる」
渡り廊下の真ん中で突然カミングアウトする陽一
生徒:「え?!」
生徒:「え~~~~~!!!」
学校中 激震が走る
ヒロ:な…なんつった今!!?
信じられない言葉に耳を疑うヒロ
渡り廊下にいる駿、亜湖、陸、香澄も驚きを隠せない
亜湖:「ど、どういうこと?」
陽一:「だからオレと颯大は恋人同士だって言ってる。な?」
陽一は颯大の肩を抱き同意を求める
颯大:「あ、ああ」
少し照れながら答える颯大
すると各教室から歓声と拍手が沸き起こる
嬉しそうに見つめ合う二人
駿もニコニコ祝福顔
その様子を複雑そうに見ているヒロ
放課後 カラオケ
亜湖:「で、詳しく説明してもらおうか」
いつものメンバーが集まる中、亜湖がいきなり仕切り出す
ヒロ:なんでこの場にオレがいるわけ?
亜湖に無理やり連れて来られたヒロ
颯大:「元々オレら幼馴染じゃん。で、オレはずっと前から陽一のこと好きだったわけよ」
亜湖:「はい、いつから? 陽一のどこがどんな風に好きだった?」
颯大:「なんだよ、まるで尋問じゃん」
陸:「まあいいから答えてやれよ。ホレ、陽一が一番聞きたがってる」
期待しながら颯大を見ている陽一
颯大:「あー…小学校4年の頃かな、オレこんなだから仲いい奴はいいけど、
そうじゃない奴にはウザがられてて」
香澄:「なんとなくわかる」
陽一:「おい!」
颯大:「陰口言われてたのを陽一が一喝してくれたんだ」
亜湖:「おー」
陽一:「オレは陰口とか大嫌いだし、颯大はいい奴だって知ってるから」
颯大:「陽一…」
亜湖:「はいはい、そこから好きになったんだ」
颯大:「意識しだしたのはそこからだけど、決定打は中学入ってすぐ陽一に
彼女ができてからかな」
ヒロ:中学入ってすぐ彼女…さすが、大人っぽいもんな この人
颯大:「初めは幼馴染取られたみたいな寂しさかと思ったんだけど、そうじゃない
気持ちが大きくなって…」
陽一:「その時言ってくれたらよかったのに」
颯大:「言えるかよ! 彼女持ちのヤツに」
陽一:「彼女っても付き合ってって言われて一緒に帰ったりしてたけど、すぐ別れたし」
颯大:「そう! でもそれからも引っ切り無しに告白されて…背高いし大人っぽくて無口だけど
肝心な時にはズバって言いのける男っぱいとこが女子の間で人気で…」
駿:「なるほど…ちょっと納得」
陽一:「いや、駿ほどモテないぞ!」
ヒロ:え!? 駿も引っ切り無しにモテてんのか!
駿:「いやオレはそれほどでも…」
ヒロ:それほどでもとは! 普通にモテてるってことだよな!
ヒロは変な汗が出てきた
亜湖:「それで、なんで今頃になって突然付き合うことになったのよ」
颯大:「それは…この前ホントたまたま二人で雨に濡れて…偶然陽一の裸を見てしまって…」
亜湖:「それで?」
容赦ない亜湖
颯大:「それで…オレが真っ赤になって動揺してるのが陽一にバレてしまって」
陽一:「ビックリしたんだ、裸なんて子供のころから見てるはずなのに…
でもそんな颯大がかわいく見えて、つい…」
亜湖:「つい?」
詰め寄る亜湖
陽一:「つい、キスしちまった」
香澄:「キャー!」
亜湖:「うぉーーー! こんな身近にもまたBLが! うぉぉぉっーーー」
BLオタクの亜湖は耐えきれず発狂する
駿:「亜湖、落ち着きなよ」
亜湖:「あっ、ごめんごめん。それで?」
颯大:「たまらずオレが告白したんだ、ずっと陽一が好きだったって」
亜湖:「うんうん」
前のめりになる亜湖
ヒロ:これってオレ聞いていいのか?
てか、自分のことのように恥ずかしいんだが…
ヒロが前髪の下でめちゃくちゃ恥ずかしがってるのを見て、駿も顔を赤らめヒロに
熱いまなざしを向ける
それに気付いた亜湖は駿の足を踏みつける
駿:「痛っ!」
陽一:「ん? どうした駿」
駿:「あ、いや…」
亜湖:「駿ったら、二人の話にドキドキしちゃって…かーわい」
駿の体をつつく亜湖
陸:よくよく見てたらめちゃくちゃわかりやすい
なんで今まで気付かなかったのが不思議なくらいだ
やっぱり亜湖っていうフィルターがかかってたからか
陸はその後も二人の様子を見ては…納得していた
