ー あのバーベキューの日から何日かたった
オレは陸ってやつの気持ちを知ってから駿とまともに顔を合わせられないでいた

昨日も駿と陸が一緒にいるところにばったり出くわし逃げ出してしまった



昼休み

女子:「キャー! 王子たちよ!!」

その歓声を聞くとヒロは教室から出て行く

ドン!

うつむきながら歩いていたヒロは人にぶつかる

ヒロ:「すんません」

陸:「ヒロくん?」

ばったり陸に出会ってしまうヒロ

ヒロ:…っ、よりによって一番会いたくないやつに…

ヒロ:「どうも…」

すぐに立ち去ろうとするヒロを呼び止める陸

陸:「ちょっといい?」



校舎裏
秋の風で枯れ葉が舞い散る中

いたたまれない空気をかき消すかのようにヒロが口を開く

ヒロ:「今日はパレードに参加してなかったのか?」

陸:「あー ちょっと先生に用事あって」

ヒロ:「そっ」

陸:「…あの、この前バーベキューの時オレと香澄の話聞いてたよね?」

ヒロ:「え!?」

陸:「隠れてたみたいだったけど…」

ヒロ:なっ…、隠れきれてなかったのか!

陸:「それで…オレはキミのねーさんと駿の仲を壊そうなんて思ってないから」

ヒロ:……

陸:「それだけはちゃんと伝えておきたくて」

ヒロ:「で、でも…駿が好きなんだろ?」

陸:「好きだよ」

ズキっ

ヒロ:そんなハッキリと…

陸:「駿とは中学から一緒だったんだけど、初めはそんなに仲良くなかった。
オレずっと成績1番でその頃ちょっと調子に乗ってて…そしたらみるみる駿に追い上げられて、
一時期追い抜かれたんだ。すごく悔しくて駿を無視してたんだけど、
駿はあの通り何考えてんのかわかんないとこあるし、普通に話しかけてきて…」

ヒロ:おい、言われてんぞ

陸:「オレは医者になるために必死で勉強してて…聞いたら駿も弁護士になるために
頑張ってるって…」

ヒロ:弁護士?!!
オレ、そんなの知らない…

陸:「なんか話してみたら気が合って…それから一緒に励まし合ったりして…
オレは元々 男が恋愛対象だったから好きになるのに時間はかからなかった」

ヒロ:てことは、もう何年も駿のことが好きなのか…

陸:「でも駿は女の子が恋愛対象だから、友達でいられたらそれでいいと思ったんだ」

ヒロ:違う…、駿は…駿は男(オレ)が好きなんだ…

ヒロは陸の思いを聞いて胸の奥がズキっと痛むのを感じた

ヒロ:駿にとってもこいつは きっととても大切なやつなんだろうな

陸:「だから亜湖との仲を裂こうとか、そんなことは思ってないから安心してほしい」

ヒロ:こいつ……
駿の周りはみんないいやつだ…だから駿もみんなに好かれて…
オレはこんなにまっすぐ駿のこと好きだと公言もできやしない情けないやつだ
こんな風に顔も隠してあまり人とも関わってこなかった陰キャだし
オレみたいなのがほんとに駿の隣にいてもいいのか?
こんなオレ、いつか駿も嫌になるんじゃ…

ビューーー
急に強い風が吹く

陸:「! ごめん、ちょっと触るね」

ヒロ:「え!?」

陸はヒロの頭に付いた枯れ葉を取ろうと手を伸ばした

駿:「ヒロっ!」