――――帰ってきた竜兄を迎え、俺たちは集まった。
「改めて。彼のことは華道部の顧問の先生に任せたよ。お茶碗は先生が修理するから安心してくれ」
「うん、竜兄」
「卯月は……どうなるのかな」
「本人次第だろう?まあ反省はしているようだが」
と部長。
3年生で学園一のマドンナと呼ばれる彼女はどこか男気のあるクールなひとだ。
「それに今日は新たな新入部員が入ったと聞いてきたんだ。そこまでしょぼくれるな」
部長がにこやかに告げる。
部長なりに快のことも気遣ってくれているようだ。そう……だよな。まずは快を紹介せねば。
「えと、部長。陽向快。俺たちとは同じクラスです。それから快、部長の白羽小梅先輩だ」
「よろしく」
「はい、よろしくお願いします!」
快が緊張しながら挨拶する。学校一の美女だもんなあ。そりゃあ緊張する。
「それと……快くんの茶道セットも購入してきたんだけどまだ茶道部に入ってくれるかい?」
竜兄が買ってきてくれた茶道セットを見せてくれる。女性ものが多いから男性ものは珍しかっただろうに、探してきてくれたんだな。
「……」
快は驚いたようにそれを見る。
「卯月が騒動を起こしたのにいいのですか?」
「君が起こしたわけじゃないだろう?それに、部員は欲しいしね」
「ええ、私が卒業したら同好会になってしまうので」
部長がふふふと微笑む。
「それでは……続けます」
快……!どうしてこんなにホッとしてしまうんだか。これからも部活で会えるから?クラスでも会えるだろうに。でも……部活で一緒に過ごせることも……嬉しいんだ。
「良かった!嬉しいよ」
竜兄が微笑む。
「それなら……次は文化祭に向けて練習かい?」
「そうなりますね。私は文化祭で引退ですが……その後はお免状や来年に向けたお稽古でしょうか?」
「そうなるね」
そうだ……夏休みが明ければ文化祭。お稽古、頑張らなくちゃな。
部長は蓮葉のお稽古を、俺は快のお稽古を見ることになった。
「その、快」
「爽?」
「……その、何か、ごめん」
落ち着くこの場に来たからこそか、ふと思う。
「どうして爽が謝るの?むしろ俺の方が迷惑をかけた」
「……そんなことは」
「いや、そうだよ。俺がちゃんと卯月と話をしなかったから。爽と蓮葉さんが羨ましいよ」
「……俺たちはずっと一緒だったし、家も近所だったから。快たちは離れてた期間もあったんだろ?」
「……そうだな。小学生までは一緒だったけど、中学では離れたから。アイツ、その時もわんわん泣いててさ。俺は親の都合だからと振り切った。けど……ちゃんと話をしなきゃいけなかったのかもしれない」
「これからしていけばいいんじゃないのか?」
「これから……」
「そうだよ。手遅れなんてことないだろ?直接会って言葉を交わせるんだから」
俺と蓮葉がそれで仲のいい幼馴染みであれるのなら、快だって。
「爽はいいのか?」
それは……どういう意味だ……?卯月が俺に噛みついたからだろうか。
「幼馴染みなんだろ?俺も……その、蓮葉のことは大切な幼馴染みだもん」
離れろなんて言われたら困る。蓮葉は気を遣うだろうが、その瞬間俺はどこかふわふわして所在の掴めないようになってしまいそうで。
「……何だか妬いてしまうな」
「え?」
「蓮葉さんが羨ましいや」
快が爽やかに笑む。その、俺たちじゃなくてどうして蓮葉が……?
ちらりと蓮葉を見やれば、ニヤニヤと嬉しそうな笑みを浮かべていた。
だから、そう言うんじゃないってば!
「お……お稽古!するぞ!」
「ふふっ」
快が苦笑する。
「な、何だよ……?」
「いや、爽はかわいいなって」
「かわ……っ」
男子に向けた言葉ではないだろ!?けど……どうしてか嬉しいこの気持ちがよく分からなかった。
けれど快からそう褒めてもらうことで、とろとろに惚気てしまいそうな俺に……納得がいかない。
――――わけでもない。

