――――合宿の2日目も順調である。今日も午前中からお点前であるが、昨日の特訓のお陰かみんなだいぶ滑らかな動きになっている。

「さーて、みんな頑張ったご褒美に~~お昼は流しそうめんよ~~」
「え、母さん聞いてないけど!?」
「サプライズだもの~~」
いや、サプライズってそう言うものだけど。

流しそうめんの機械を組み立ててくれたのは竜兄だ。

「すごい、流しそうめんの機械があるんだ」
「まあ何故か成り行きであるよ、うち」
感心する快にそう告げる。

「空手の合宿の時もたまに借りるんだよー。でもほんとに何でだろー」
蓮葉がくすくすと微笑む。

「因みにホットプレートとたこ焼き器とジンギスカン鍋もある」
「前者2つはまあ分かるとして、最後の何?」

「知らない?なら冬にうちに来た時にやろうか?」
「うん、見てみたい」
快が目をキラキラさせてくる。そんなに珍しいものなのかな?あれ。でも思わずして冬の予定もできてしまった。これから楽しみなことばかりだな。

「あ……でも部長は」
「引退はするが、来ないとは言ってない。その時は招待よろしくな」
「それはもちろんっ!でも忙しいんじゃ……」

「忙しい受験勉強にも息抜きは必要さ」
「まあ部長の息抜きにもなるなら……」
文化祭が終われば暫くは部活にも来られないだろうし……たまに部長に会えるのもいいかも。

「私も大歓迎よ~~。是非来てね~~」
母さんもノリノリだしなあ。

俺たちは流しそうめんを楽しみながらも話に華を咲かせたのだった。

――――そして、夕方。合宿を終えた面々を見送る……とは言え蓮葉は隣なので共に見送る側だが。

「それじゃ、気を付けて帰ってな」

「ああ、爽」
快が答えれば、卯月と部長も続ける。

「合宿、楽しかったよ。家でもおさらいする」
「そうだな。夏の間に忘れては困るし」

「だな。でもまた練習したくなったら連絡してくれ。一緒にやろう」

「ああ。次は2人っきりを狙わないと」
え?快ったら何を……。そんなことを言うもんだから卯月に小突かれてるぞ!?部長や母さんは涼しい顔で笑んでいるが。

「え?どういうこと?」
「竜兄はいいの」
変なところで抜けてるんだから。
「ええ~~」
それでもへらへら笑ってるところもな。

3人を見送れば蓮葉も隣に帰るんだもんな。

「そーちゃん」
「ん?」

「合宿楽しかったよね」
「もちろん」
自分の部屋じゃなくてみんなと一緒に客室に滞在して良かった。快とも色んな話を……。いや、昨晩のことを思い出しちゃったじゃないか!

「そーちゃん、顔真っ赤だよ?」
「な、何でもないっ!あ、暑さだ、夏の暑さ!」
「じゃぁそう言うことにしてあげましょー」
くすくすと微笑み『またね』と手を振って遠ざかる。幼馴染みには相変わらずお見通しのようだ。

しかし……昨晩のこと。両想いってことでいいんだよな?その事実は照れ恥ずかしいのと同時に、不思議な感覚を与えてくる。

――――それと同時に名残惜しさも。
でもそれは臆病な俺ではない。このツンツンと張り巡らせたバリケードの中の……素の俺だ。