これは恋じゃない!断じて!



――――夕食も終わり、快と風呂を済ませて男子部屋に戻れば布団を敷いて暫しまったりだ。

「なあ、爽はどうして茶道を始めたんだ?いや……家の事情か」
布団に寝転びながらふと快が問う。

「最初はそうだけど……やっぱ好きだからかな。茶道の所作って独特なものがあるけど……ひとつひとつの動作が洗練されていて全部意味があるんだよ」
「それは分かる。爽の所作はいつもきれいだ」
「……っ」
い……いきなりきれいって……。いや、これは茶道のことで……。

「茶道のお点前を披露する爽はずっと見ていたいほどだ。そして、そんな爽をすぐ近くで見れることも嬉しいんだ」
「その……それは俺も……」
「爽も?」
「最近はさまになってるし……その、お前のお点前、見守るの、好きだし」
「じゃぁ、お揃いだな」
快が俺の頬に掌を伸ばしてくる。
「ん……まあな」
何だか頬が熱いような……快の掌が触れていたからだろうか。

そんな気をまぎらわすように話題を振る。
「快、その……今日はたくさんやったけど、疲れてない?」
「うん?爽と一緒だからむしろ正反対!」
「え、どういう原理?」
「爽と一緒だと、ずっと楽しいからさ」
「……っ」

「だからこれからも爽と一緒に学校生活送りながら、茶道もしたいなって思うんだ」
「……快」

「俺って他人が思うより不器用なところが多くてさ。それなのに爽はいつも丁寧に、俺が分かるように何度も教えてくれたから」
それは教える立場の者として当然……のようにも捉えていた。

「母さんもそうやって教えてくれたってのもある」
「でもそれができるのも、爽の素質だと思う」
俺の……素質。

「だから爽が部長になったら俺もみんなもついていくし、これから後輩が入ったら後輩たちも慕ってくれるよ」
「そう……かな?」

「うん、だから爽はもっと自信を持つべきだよ」
「……っ」
「でも挫けそうになったらいつでも俺を頼ってくれ」
「快」

「俺はいつだって爽の隣で力になりたいから」
「どうして……そこまで」
「爽を見て一目惚れした……じゃダメかな?」
「それっていつの……」
俺に自覚はないけど、俺たちが会ったのって小学生の頃だろ?

「一番……初めから」
「……っ」
つまりは快はあの時から……?過度な期待などしないと決めていた。俺はあの時からずっと臆病だった。初めての失恋から……ずっと。

「俺なら爽を悲しませたり苦しませたりしない。俺のずっと憧れのひとだから」
「……快」
ずっとずっと、その言葉が欲しかったのかもしれない。竜兄でもなくて、家族でもなくて。快がくれたからこそ、心を落ち着かせる何かがある。

「さ、明日も合宿だし……寝ようか」
快が時計を確認しそう告げてくれる。
「う……うん」
未だ冷めやらぬ熱。いやさらに悪化していないだろうか。

隣に快が寝てる……その事実を意識すれば何だかドキドキしてしまう。自分の部屋に逃げ帰りたくなるのに、何だか快の隣も離れがたいんだから。……変なの。暫くすれば快の寝息が聞こえてくる。

「……寝、ちゃったのか……。俺の気も知らずに」
「……」
今何か快が……いや寝言かも。
よく分からないけど……俺の頬は一晩中その感触を忘れてくれなかった。

「……お揃いだな」
そこ快の声は夢だったであろうか……?
しかしながら夢でなかったらいいなと感じるのは……俺もそろそろ素直になる頃合いなんだろうか。