陽光が柔らかく宮廷の庭を照らし、花々の香りがそよ風に乗って漂っていた。
 清婉はその庭の縁に立ち、遊ぶ皇子を見守っていた。小さな手で無邪気に花びらを掴み、屈託のない笑みを浮かべる我が子の姿に、胸が熱くなる。

 「どうか、穏やかで優しい世界で育ってほしい……」

 そう呟く清婉の瞳には、母としての覚悟と、深い愛情が宿っていた。過去に幾多の苦難を越えた彼女だからこそ、今この瞬間の尊さが心に染み渡る。

 帝国は彼女と凌煜の絆に支えられ、ゆるぎない安定を築きつつあった。
 皇子の誕生は、ただの血筋の継承を超え、未来への希望の象徴となっていたのだ。

 清婉はゆっくりと息を吐き、肩の力を抜く。彼女の背後で、子どもの笑い声と鳥のさえずりが溶け合い、まるで祝福のように響いていた。

 「お前が生まれたことで、私は母としても一人の女性としても、強くなれた」
 心の中でそっとそう誓い、清婉はそっと庭を後にした。

 一方、凌煜は書斎の窓辺で遠くの山並みを見つめていた。
 かつては帝位に自信が持てず迷いもあった若き皇帝だったが、今では己の役割を深く理解し、その力を誇りに思っている。

 「この国の未来は、清婉と皇子の笑顔にかかっている」
 そう呟き、彼は手を胸に当てる。夫として、父としての覚悟が彼の胸に満ちていた。

 二人の間に交わされた約束は、日々の小さな積み重ねでさらに強くなり、やがて帝国全体の未来を照らす光となっていくのだった。

 

 夜の宮殿に、静かな時が流れていた。
 月明かりが障子越しに差し込み、清婉は眠る皇子を見つめていた。小さな胸の上下に合わせて、彼女の心も穏やかに波打つ。

 隣で凌煜が静かに息をつき、優しく彼女の手を握る。

 「長い道のりだったな」
 その声には疲れもあったが、決して揺るがぬ愛が宿っていた。

 清婉は小さく頷き、涙を浮かべる。
 「あの時の私たちには、想像もつかなかったほどの未来がここにある。あなたと共に歩めたことが、何よりの宝物です」

 凌煜はその手を両手で包み込み、強く握り返す。

 「俺も同じだ。これからもずっと、お前とこの子と共に生きる」
 彼の言葉は重く、深く、永遠の誓いとなって胸に刻まれた。

 遠くで夜鳥が鳴き、朝の気配がほんのりと漂い始める。
 新しい日がまた、二人の前に静かに幕を開けようとしていた。

 清婉はふと顔を上げ、窓の外の星空を見つめる。
 「これからも、誰よりも強く、美しい華嫁であり続けましょう」
 その声は自信に満ちていた。

 凌煜は微笑み、そっと彼女の額に口づけを落とす。

 「お前こそが、俺の永遠の光だ」

 その愛は、時を超え、世代を超え、帝国の歴史の中でいつまでも輝き続けるだろう。
 



    END.