「……いっちゃった」

 篝が見えなくなった頃。
 あたしの影が、街灯照らされて足元にぼんやりと浮かぶ。
 ふと、自分の頬に触れて。

「うそ、泣いちゃってるじゃん。我慢したつもりだったのに」

 あははと軽く笑って、上を向く。
 涙がこれ以上、こぼれないように。

「ダメだなぁ、あたし」

 あたしは、きっと、篝にとって登場人物の一人。
 それ以上でも、それ以下でもない。
 
 わかっていた事だ。
 あたしの大切な人には、大切な人がいて。
 それは、あたしじゃない。

 あたしは、篝のヒロインにはなれない。
 
「わかってはいたけどさ。……きっついなぁー」
 
 あ、一番星。

 その瞬間。
 胸に秘めた傷が、閉じ込めていた感情が溢れだして。

 あたしは、ただ大声で泣いた。