その後も、私は王族の方々と代わる代わる踊っていた。
 まさか陛下と踊るとは思ってもなく、私はルーカス様と踊るのとは別の意味でかなり緊張してしまった。

「リンは運動神経が良いので、余も踊りやすかったぞ」
「お、畏れ入ります……」

 陛下に満足してもらい何よりだったが、私は下手こかないように緊張しっぱなしだった。
 連続で踊っていたのもあり、私は少し休憩を取ることにした。

「リンさん、お疲れ様です。とても綺麗に踊れていましたわ。初めてのダンスパーティーとは思えませんでしたよ」
「ははは……ど、どうも」

 私はニコリと微笑むアメリアさんの側に行ったのだが、実際にキチンと踊れていたのか全く記憶になかった。
 それぐらい、高貴な方とのダンスに緊張していた。
 キチンと踊れていたのは、ここ暫くずっと行っていたダンスの訓練の賜物だろう。
 すると、アーサー様とのダンスを終えたマリア様も私とアメリアさんのところにやってきた。

「ふう、身長差があり過ぎると踊るのも疲れるのう」

 マリア様は私ほどではないがそこまで身長は高くないので、長身のアーサー様と踊るのはかなり大変だっただろう。
 かくいう私も、アーサー様とダンスした際はステップなども含めてかなり大変だった記憶があった。
 すると、ジュースを飲み終えたマリア様が私にあることを言っていた。

「リンが王家のものと踊っているのを、悔しそうに見ていたものが複数おったぞ。リンを金づると見ているものと、ルーカス兄様との結婚を夢見る令嬢じゃ」

 どうやら、先ほど陛下とダンスをした際に、その二つの勢力が私に熱い視線を向けていたという。
 私と何とかダンスをして気を引きたくとも相手が意見を言う事のできない陛下だし、ルーカス様と何とか踊りたい貴族令嬢もルーカス様と踊れず悔しい思いをしているという。
 あの、ルーカス様と踊れなくて私に悔しい視線を向けるのはおかしい気がしますよ……

「何にせよ、リンに邪な考えを持って接触してくるものへの妨害は続くのじゃ。ほれ、次の相手がやってきたぞ」
「えっ?」

 マリア様がニシシとニヤけながら視線を向けた先には、同じくいい笑顔をしているダイン様の姿があった。
 更には顔馴染みとなった軍人貴族の姿もあり、皆がいい笑顔だった。

「リンのガード役ってのもあるが、皆リンがどれだけ踊れるか気になっているぞ。全員嫁か婚約者がいるから、気にせず踊るぞ」

 ダイン様、十人近くの軍人貴族がいるのは気のせいじゃないですか?
 あっ、はい。
 私の目の錯覚ではないんですね。
 その後は、休憩無しにひたすら軍人貴族とダンスをすることになった。
 何気に、ダイン様が一番ダンスが上手かったのが衝撃的だった。
 もちろん下心を持っている貴族は軍人貴族に表立って喧嘩を売ることはできず、かなり悔しい思いをしていた。
 その間、ルーカス様がニース様と仲良くダンスをするというホッコリな場面もあったが、じっくりと見ることはできなかった。
 こうして、時間はどんどんと過ぎていき、ラストダンスも近づいていったのだった。