アーサー様は苦笑したままのルーカス様に話しかけ、一体何が起きたのかと聞いていた。
 その間に、私は起き上がって体についた土汚れを手でぱんぱんとはたいた。

 たんたん、たんたん!

「キューン、キューン……」

 相変わらずシルバは激おこ状態のスラちゃんに説教されていて、時々チラチラと私の方を向いていた。
 でも、そろそろ倒した魔物の後片付けや怪我人の治療を行いたい。
 すると、アーサー様が面倒くさそうに頭をポリポリとかきながらシルバとスラちゃんのところに歩み寄った。
 そして、アーサー様はお座りポーズのシルバの頭の上に大きな手をポンと置いた。

「はあ、お前は馬鹿だなあ。折角ご主人様が良い雰囲気になっているのに、興奮してそのご主人様を突き飛ばすなんてな」
「キューン……」

 シルバは一瞬解放されるかもと思っていたが、逆にアーサー様に事実を再認識されてまたもやガクリと項垂れていた。
 スラちゃんは、アーサー様の意見に全面的に同意しているけど。
 そんな項垂れたシルバに、アーサー様が一つの提案をした。

「悪い事をしたのなら、罰を受けないといけないな」
「キュ、キューン、キューン!」

 シルバはそれはやめてとアーサー様に飛びかからんかの勢いだったけど、スラちゃんは罰はもっともだとウンウンと頷いていた。

「取り敢えず、スラちゃんが魔物の血抜きをしやすいようにオークキング以外をひとまとめに運ぶことだ。他の兵もリンも仕事があるから、そのくらいはしないとならないな」
「ウォン!」

 アーサー様はシルバも頑張って魔物を倒したのを知っているので、そこまで厳しい罰は与えなかった。
 シルバも、「分かりました」と元気よく返事をして直ぐに動き始めた。
 一方、スラちゃんはアーサー様の気持ちも分かっていたので、やれやれって感じで血抜きの準備を始めた。
 そんな二人と一匹を横目に、私はミスリル製の剣を拾って魔法袋にしまった。

「ルーカス様、私は治療を始めます。重傷者は、ある程度治療して王都に行ったらアメリアさんと共に治療となりますが如何しますか?」
「リン、その方針でいい。私たちも、周囲の警戒を続けながら撤収の準備を続ける」

 ルーカス様は、通信用魔導具をポチポチと操作しながら返事をした。
 ルーカス様はアーサー様とこの後どうするか話し合っていたので、ここは邪魔しないようにしよう。
 あっ、そうだ。
 私も含めてみんな返り血などで至る所が血まみれだから、先に生活魔法で綺麗にしておこう。

 シュイン、ぴかー!

「「「うお、一瞬で綺麗になったぞ!」」」
「相変わらず、魔法の威力が桁違いだな……」

 アーサー様は、体が綺麗になって驚く兵をよそに少し呆れていた。
 血の匂いをさせるよりもずっといいだろうと思いながら、私は怪我人の治療を始めた。

 ズルズル、ズルズル。

「ウォン!」
「それじゃあ、今度は森側にある魔物を持ってきてくれ」
「ウォン、ウォン!」

 シルバはというと、顔馴染みのベテラン兵にあれこれ指示を受けながらどんどん魔物を運んでいた。
 集まった魔物をスラちゃんが次々と血抜きをしているけど、アイテムボックスにも血抜きを終えた魔物を入れていた。
 スラちゃんの魔法袋にはどれだけのものが入るのだろうかと思うくらい、相当な量の魔物をアイテムボックスに収納していた。